漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百八十八話『蟹ノ炊キ込ミゴ飯』 ページ31

太｢じっと見詰める程､気に入ってくれるとはね｡
こちらも悩んだ甲斐があったよ｡｣



『……はぁ』




何が､悩んだ甲斐があったよ……だ｡
なんだあのワンピースの量は｡




『こちら､蟹の炊き込みご飯です』



太｢わぁい！｣




そして何故､自分は太宰にご飯を作っている？
嬉しそうに頬張っている彼を見たらもう何も云えないが｡




太｢凄く美味しい｣



『……お粗末様です』



太｢君も食べなよ｣



『えっ』



太｢えっ？食べないの？｣



『……えっと僕はシャワーをお借りしたいです』




太宰は一瞬､不機嫌な顔になったが“それもそうかぁ”と呟き
シャワー室へ案内してくれた｡




━━━━━

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シャワーを浴びて息を吐く｡

借りたタオルで頭と体を拭いて下着を身につけようとした時､気付いてしまった｡




『……変わっ……て……る』




籠の上にあった芥川の下着が変わっていた｡


暫く固まった｡そして目の前の新品の下着とワンピースを
身に着けて太宰が居るであろうリビングへと足を進める｡




『太宰さん！勝手に！僕の！下着を！！』



太｢あぁ､きたきた｡ほら此処に座り給え｣




ソファで寛いでいた彼は爽やかな笑みを浮かべてポンポンと
クッションを叩く｡


芥川はわなわなと震えて平然としている太宰に詰寄る｡




『聞いていますか！？こればかりは僕も許せな』



太｢ほらほら髪を乾かすよ｣



『人の話を』




ガァァアアア！！とドライヤーの音が芥川の言葉を遮る｡

舌打ちをしても彼には聞こえない｡


腕を引っ張られて太宰の前に座る形になった｡




『……人間失格､人として終わっている｡』



太｢なんか物凄い事を云ってるようだけど聞こえないから〜｣




耳元でそう云われ背中がぞくりとする｡

芥川の反応を見た太宰はニンマリと笑う｡




太｢君は耳が弱いのかい？｣



『……っ､いい加減に！』



太｢はぁい､大人しくね〜｣



『……ちっ』




無理やり頭を掴まれては芥川は舌打ちをするしかない｡

心の中で自分の上司である包帯野郎の悪口を云う｡




太｢はい､終わり｣



『……どうも』



太｢怒らないで〜｣




こんな事をされて怒らない方が可笑しい｡
此奴は最近､調子に乗りすぎてるな｡




『……僕は仕事がある故､失礼します』



太｢君､ご飯は？｣



『本部で食べます』



外に出ようとする芥川の足を嫌々としがみ付く太宰の顔面を
蹴ったのだった｡


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