第百六十一話『見当タラナイ』 ページ4
片手にはケェキの入った箱
もう片方には救急箱を持った太宰が自分の執務室の前で一人考え込んでいた
太「……何事も無かったかのように振る舞うか。いや、でも手を挙げたのは私が悪い。でもどこでどう謝れば……」
悶々と考えること数十分
そして扉のドアノブに手を掛けようとして引っ込めること数百回。やっとの思いで扉を開けた
太「し、失礼……す、するよ」
何が“失礼するよ”だ、此処は自分の執務室。何も云わずに部屋に入ってもいいのに。何故か手が震えるほど緊張していた
太「書類は終わったかい?まあ、あれだけ時間があったんだから、終わっていて当然だよね?
それと、君のことだからどうせ頬は冷やしてないだろうと思って手当をしてあげようと思っているんだけど……」
ペラペラと思ってもいない言葉が出てくる
何でこんな事しか云えないんだ、と自分に嫌気がさしてきた
太「……?返事がない」
ここでやっと違和感に気づく
机には綺麗に並べられている書類。汚れていた執務室は御丁寧に掃除されていて、美しい花も飾られている
……でも、一番逢いたい人の姿が見当たらない
太「……芥川君?一体何処に」
首を動かして辺りを見回す
若しかして入れ違いになってしまったのだろうか。否、かれこれ数十分扉の前に居たのだ。その時から中に人の気配がした、絶対にいる筈だ
太「隠れんぼかい?子どもだねぇ芥川君は────えっ?」
ソファの後ろに黒いのが見えた
蹲るように倒れている彼女は元から小さい体が更に小さく見えて……
太「芥川君ッ!」
丁度、入口から死角になっていて気づかなかった
芥川が真っ青になって倒れていたのだ
太宰は急いで駆け寄り呼び掛けるが応答無し
太「……はっ、早く……森さん……森さんに診せなきゃ……」
軽い体を持ち上げて太宰は勢いよく執務室を出る
周りの黒服達か驚く中、太宰は懸命に走った
後悔と罪悪感が一気に襲う
若しあの時、彼女に無理をさせなければ
若しあの時、彼女を打たなければ
若しあの時────
太「芥川君!ごめん……ごめ……っ」
今更なにを云ったって遅い
謝罪の言葉も懺悔の言葉も彼女の耳に入らない
太「もう少しだから……もう少しの辛抱だから」
────だから……
太「生きろ!」
芥川の固く閉じられた瞼がピクリと動いた気がした
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第百六十二話『可笑シイデショウ』→←第百六十話『小サナ期待ノ光』
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アニヲタ(プロフ) - 少し遅くなりましたが最近(?)20巻発売されましたね!私はもう…ショックが酷くて読んだ後一週間位病んでました笑更新再開ずっと気長に待ってます!無理の無いご自分のペースで書いてくださいね…!ずっとずっと待ってます! (2021年1月11日 22時) (レス) id: 71f36505fa (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - アニヲタさん» いえいえ、リクがありましたら可能な限り受け付けます。お時間が掛かるかもしれませんが、、、でっぷるは映画で一度見たきりなのであまり詳しく覚えてないです、、小説は友人に貸して帰ってこないんですよ笑 (2020年7月30日 3時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
アニヲタ(プロフ) - 厭々!!!リク受けて下さるだけでも十分過ぎるのにぃ…マジで有難う御座います…!実は私もでっぷる編全く、これっぽちも知らんのですよねぇ...。 (2020年7月28日 18時) (レス) id: a9a289fd68 (このIDを非表示/違反報告)
らしろ(プロフ) - アニヲタさん» コメントありがとうございます。でっぷる編ですが今、手元に小説がない状況でして書くことが出来ないんです、申し訳ないです、、、リク希望ありがとうございます。時間が掛かるかもしれませんが、受付致します。 (2020年7月28日 18時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
アニヲタ(プロフ) - あのぅ…でっぷる編書くご予定はありますでしょうか…?若し無ければリクをしたいのですが… (2020年7月28日 14時) (レス) id: a9a289fd68 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2020年3月16日 21時