漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百八十七話『好ミノワンピース』 ページ30

『……何ですそれ』



太｢ワンピース♡｣




それは判っている｡

何故ここでワンピース？

芥川の脳内はハテナマークが増えていく｡




『真逆､僕に着せようとは思っていませんよね』



太｢……真逆､君は私にこのワンピースを着ろと？｣



『…………はい』



太｢現実逃避はやめ給え｡君の服は洗濯するからこれを着ろ｣




私が着替えさせようか？と云う変態野郎を蹴っ飛ばし､
部屋の外に追い出して鍵を閉めた｡




『……ったく､他にもあっただろう』




口では文句を云うが､紺色で裾には可愛い小さな花が
散りばめられており好みのワンピースだ｡




『……今回だけ』




服を脱いでワンピースを着る｡

そして立ってくるりと回ってみる｡




『……』




スカァトなんて何年ぶりだろうか｡

芥川の動きに合わせて揺れる裾は踊っているように見えて
心做しか気分が上がる｡




『……ふふっ』




いくら男として生きると決めてもやはり中身は女なのだ｡

鏡の前に立ってじっくりとワンピースを眺める｡




『……髪､切らないとな』




肩に付いた髪は相変わらず手入れがされてなくて傷んでいる｡
しかし毎回､任務の後に(返り血がつく為)シャワーを
浴びるので手入れは面倒になった｡




太｢そんなに自分を見詰めて如何したの｣



『……いつからそこに』



太｢君がワンピースを着て回って笑ってたところから｣



『そんなに前から見てたのか！変態包帯糞悪魔！』




いつの間にか背後にいた男を肘でど突いてやる｡


しかし彼は痛そうな顔をしながらも嬉しそうに
口角を上げて芥川に擦り寄る｡




太｢気に入ってくれたかい｣



『……別に』



太｢うふふっ､似合ってるよ｡とても｡｣




そう云われるとお世辞でも嬉しい｡

好みのものが全て自分に似合うとは限らないから｡




『……ありがとう､ございます』



太｢もっと着てみたかったら云ってね｡まだまだあるから｣



『……まだまだ？』




怪訝な顔をして彼を見れば満足そうに微笑んで
芥川を隣の部屋に連れて行く｡




太｢じゃあ〜ん！｣




『……なんですこの量は』




右を見ればワンピース､左を向けばたくさんの女物の靴｡
前を見れば帽子やら頭の飾り｡




『……あぁ成る程｡
これらを興味のある女性に贈品(プレゼント)しているのですね』




太｢ん？これ全て君のだけど？｣






────誰か嘘だと云ってくれ！！



.

第百八十八話『蟹ノ炊キ込ミゴ飯』→←第百八十六話『目ヲ閉ジタクナイ』

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す