06 ページ6
Aside
「僕も協力します。……お願いです。協力させてください」
まふまふさんが言った言葉に頭が追い付かない。
協力したい…って、病院からの脱走に?
はっきりいって、今までまふまふさんが目の前にいる、ということがどこか現実味がなかった。
だから、今まで話していたのも独白のような感覚だった。
……まさか、こんなことを言われるとは思わずに。
「……まふまふさんが、こんなことをする必要はないですよ」
「必要がある、とかないとかそういう問題じゃないんです。僕が沢島さんに協力したいんです」
…なんとなく、わかってはいた。
実写動画での彼の語彙力はすごい。口喧嘩では絶対にかなわない、というコメントもちらほらと見かける。
でも、私なんかにまふまふさんの手を煩わせるわけにはいかない。
「駄目です。まふまふさんがいちリスナーとプライベートで話しているなんて、炎上騒ぎになりかねませんよ」
「そのことは承知の上です」
どうすればまふまふさんを納得させられるのだろうか。
今のところ、彼が納得する気配は微塵たりともない。
「それに、その体で何ができるんです? 病院を脱出することすらできていないじゃないですか。本気で自分のしたいことをするなら、大人の協力なしには成り立ちませんよ」
……論破、されました。
元からそのことについては、不安に思っていた。
病院を抜け出すことは何とかできたとしても、この身体で自分のやりたいことができるのか、ということについて。
今まで考えないようにしてきたけれど、ここまで見透かされては仕方がない。
「迷惑、かかると思うんですけどいいんですか?」
「もちろんです!」
どうやら、まふまふさんと病院を脱走することになったらしい。
ふと時計を見上げてみれば、もう十時過ぎ。かなり長い間話していたらしい。
「どっちにしろ、今日はできないと思うので病室に帰ります。…計画実行の日は、なるべく早い方がいいですね」
早くしないと死んでしまいますから。という言葉は呑み込んだ。
「明日、来れますか?」
「たぶん無理です。今日脱走したことで、向こうも警戒心を強めたはずなので。…明後日はどうでしょうか?」
「大丈夫です。僕も、その日はまだ入院中なので」
話し合った結果、明後日の午前七時、まふまふさんの病室の前に集合となった。
「下準備、しておきますね」と去り際に聞こえた気がしたのだが、下準備とはなんだろうか。
145人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます! (2022年12月5日 9時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです! (2022年11月4日 20時) (レス) @page22 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 藍猫さん» おお!おめでとうございます!!(一年ほったらかしにしてて本当にごめんなさい……) (2022年9月4日 11時) (レス) id: 84f8a35d43 (このIDを非表示/違反報告)
藍猫 - スウッッーーーーー…そういえば10月18日って私の次の日じゃないですか…えまって嬉しい( 〃▽〃) (2021年7月17日 2時) (レス) id: 0f30a0c194 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 翡翠琥珀さん» 飢えているから書けたんですw そう言っていただけるなんて嬉しいです……! 自信につながります1 (2020年6月18日 21時) (レス) id: a6aff5c4e4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年4月30日 15時