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まふまふside
「……っ」
Aさんの喉がヒュッと鳴る。
それに気づいてAさんの方を見れば、震えていた。
「Aさん？ どうしたの？ ……大丈夫！？」
尋常ではない。
そう気づいたのはすぐだった。
顔は青ざめ、体は震え、強ばっている。
背中をさすると、Aさんの震えが伝わってきた。
「大丈夫！？」
そう訊いても、Aさんは返事をしない。
手を握ると、とても冷たかった。
「返事をして。お願い……、僕はここにいるから」
もう一度そう言うと、かすかにだけれど反応があった。
「……こわ、い」
その小さな声を聞き取ろうと、耳を澄ませる。
「……やだ、死にたく、ない…」
途切れ途切れのその声は、震えていた。
泣き出しそうで、怯えていて。
「大丈夫、大丈夫」
背中をさする。
そうだ、Aさんだって人間だ。死ぬのが怖くないわけがない。
死を身近に感じるのは怖くて、どんなに気を張っていても、自分という存在がこの世から消えてしまうのは苦しくて。
……なのに、僕にはなにもできない。
……いや、違う。
僕に出来ることはある。探すんだ。
Aさんの震える手を取る。包み込むように、優しく。
風が吹く。その風に、僕の声をのせた。
歌詞なんてない。ただ、君のためだけに作ったこのメロディ。耳の上を滑るように流れる、優しい音。
僕の歌が大好きって、言ってくれたよね。僕がいたから、君は今ここにいるんだよね。
なら、僕の声を君に届けるから。僕が歌うことで、君の存在を立証してあげるから。
「だから＿＿＿起きてよ」
いつの間にか、君の震えは止まっていた。
最期に、僕の声を君に届けられたかな。安心、してくれたかな。
「大丈夫だから」
栄養失調って言っていたよね、君の病気。
苦しまなかったかな、怖くなかったかな。
僕の声が、君の灯火になれたかな。
＿＿＿もう君は、動かない。
ぽつり。雫が君の頬を伝う。
上から落ちてきているんだね、ほら、雨が降ってきた。
＿＿＿僕の涙なんて、誰も気がつかないよ。
・
沢島A。五月十日、死去。
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます！ (2022年12月5日 9時) (
レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです！ (2022年11月4日 20時) (レス) @page22 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 藍猫さん» おお！おめでとうございます！！（一年ほったらかしにしてて本当にごめんなさい……） (2022年9月4日 11時) (レス) id: 84f8a35d43 (このIDを非表示/違反報告)
藍猫 - ｽｳｯｯｰｰｰｰｰ…そういえば10月18日って私の次の日じゃないですか…えまって嬉しい( 〃▽〃) (2021年7月17日 2時) (レス) id: 0f30a0c194 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 翡翠琥珀さん» 飢えているから書けたんですw そう言っていただけるなんて嬉しいです……！ 自信につながります１ (2020年6月18日 21時) (レス) id: a6aff5c4e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千々 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時：2020年4月30日 15時
