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まふまふside



タクシーから降りると、そこは商店街。

古くからあるお店もあれば、駅近くになると最近のお店も揃っているなかなか優秀な商店街だ。



「わぁ…。すごい! お店がこんなにたくさんあるの、初めて見ました!」



Aさんが笑う。

今までのような儚げな笑顔ではなく、明るい、太陽を連想させるような笑顔だ。



「どこかに行きたいっていうのはある? ここにはだいたい何でもそろっているよ!」



そう訊くと、Aさんは首を傾げた。



「うーん、実は特にないんですよね…。私にとって、外に出るのが第一目標でしたから」



じゃあ、どこに行けばいいんだろう…?

ぐるりと辺りを見回すと、簡素な造りの和菓子屋が見える。



「…あ! じゃあ、あの和菓子屋にしない?」



僕、和菓子が好きなんだよね、と笑う。



「和菓子…私、お団子が食べてみたいです! …お団子、売っていますかね?」

「お団子が売っていない和菓子屋なんて、そうそうないから大丈夫だよ」



暖簾をくぐり、和菓子屋に入る。

ここはまだ駅から遠いせいか、老舗の店舗が多いのかな。



「いらっしゃいませ」



そう声をかけてくれたおばあさんに一礼をすると、商品棚に向き直った。



「なにがいい?」

「…これ、でいいですか?」

「もちろん!」



Aさんが指さしたのはみたらし団子。

和菓子の定番のようなものだが、どうやらAさんは食べたことがなかったらしい。



「みたらし団子、二つください」



おばあさんが商品を包み、渡してくれる。

お金を払うと、外に出た。



「あ、ちょうどベンチがある。あそこで食べよう?」



そう言うと、返事はしたものの、Aさんは少し浮かない顔だ。



「どうしたの?」

「あの……お金、払わせちゃってごめんなさい…」



申し訳なさそうにそれだけ呟く。

拍子抜けしてしまった。そんなことを気にしていたのか。



「大丈夫、僕がAさんに協力したくて、しているんだから」



安心してもらえるように、と自信たっぷりにそういうと、Aさんは急に顔を輝せた。



「今…私のこと、Aって呼んでくれましたね…!」

「あっ」



いつのまにか、彼女を名前で呼んでしまったいたことに気が付く。



「ごめん、つい言っちゃって…。嫌だったら、すぐに戻すね!」

「そんなこと全然ないですよ! 逆に…友だちみたいで嬉しいです!」



そう言った彼女の顔は、今までのどの顔よりも綺麗だった。

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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます! (2022年12月5日 9時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです! (2022年11月4日 20時) (レス) @page22 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 藍猫さん» おお!おめでとうございます!!(一年ほったらかしにしてて本当にごめんなさい……) (2022年9月4日 11時) (レス) id: 84f8a35d43 (このIDを非表示/違反報告)
藍猫 - スウッッーーーーー…そういえば10月18日って私の次の日じゃないですか…えまって嬉しい( 〃▽〃) (2021年7月17日 2時) (レス) id: 0f30a0c194 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - 翡翠琥珀さん» 飢えているから書けたんですw そう言っていただけるなんて嬉しいです……! 自信につながります1 (2020年6月18日 21時) (レス) id: a6aff5c4e4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/  
作成日時:2020年4月30日 15時

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