#さかたんだけ ページ17
そんな事ばっかりしてたから。
頭の中はさかたんだらけだったから。
彼氏にフラれるのなんて、当然で。
「俺より大事なヤツいるよね」って言われて、否定できない私に彼は。
「俺がフラれるんじゃない、俺がお前をフるんだよ」と言って、そのまま連絡してくることも無くなった。
友達でもなければ、先輩後輩でもなくなってしまった私達は、顔を合わせればお互いに気まずかったけど、それだけで。
フラれた事に大したショックを受けてない私は、やっぱりさかたんの事が好きになってるんだな……なんて実感して。
彼と些細な会話を交わすことにすら嬉しいと感じてしまっているんだから、きっとどうしようもない。
そしてさかたんのバイトも通常営業に戻って、彼を心配していたバイト仲間達も安心できるようになって。
気が付けばカレンダーは7月になっていて、気が付けば今年も半分を過ぎて。
今年の夏休みは、みんなでどこに遊びに行くようになるかな……なんて考えていたバイト休みの深夜、私のスマホが着信を告げた。
いつもはメールやメッセージアプリの到着を告げる短い振動ばかりだったから、通話の着信を知らせるメロディが流れて。
一気にさかたん事件を思い出して、全身でビクッとしてしまって、恐る恐るスマホを見た。
「……なんだ、さかたんか……」
それにしても珍しい……なんて思いながら、通話をタップしてスマホを耳に当てる。
『もしもし?起きてた?』
一瞬、何かあったのかな?なんて考えたりもしたけれど、向こう側から聞こえるさかたんの声は、いつもの元気そうなさかたんの声で。
やけに近く感じる彼の声に、ドクンと心臓が大きい音を立てた。
「うん、起きてた」
『……そう?なんか眠そうやけど』
「考え事してただけ」
『へぇ?なに考えてたん?』
スマホから聞こえるさかたんの声が、心地良いのに居心地悪くて。
いつも聞いてるさかたんの声よりも、甘く感じてしまうのは……きっと私の気のせいで。
まるで耳の真横に心臓が移動してきちゃったんじゃないか……っていう位にドキドキが聞こえる。
「夏休み、今年もみんなでどっか行くのかな?って考えてた」
『んふふ……去年いろいろしたもんな』
「うん」
『今年もあんのかな?』
ホントに。
ドキドキする。
どうしよう。
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