#裏切者 ページ13
多分、私の人生の中で、初めて何かがプチンと切れたのは、この時だと思う。
センラさんがスマホの電源を落とした直後、今度は私のスマホがブルブルと震え出した。
手に取って画面を見てみれば、知らない番号が表示されていて。
ソレを見たセンラさんが眉間に皺を寄せたから……彼女からの着信なんだって事が分かった。
セ「……っおい!!」
「……もしもし」
迷わず通話を押した私に、センラさんは掌で顔を覆って溜息をついて。
さかたんの顔は見る事が出来なかった……し、これからの会話を聞かれたくなかったからセンラさんの家のトイレを借りて閉じこもった。
「Aさんの電話よね?」
スマホの向こうから聞こえてくる声は、仕事中の彼女と寸分違わぬ調子で。
さかたんに酷い事をしたとは到底思えないような、明るい声で……余計に怒りが湧いてきた。
私の番号は教えてないし、きっとセンラさんもそうだ。
入手方法なんて、さかたんの今の様子を見てたら簡単にわかる……それが更に私の怒りに油を注ぐ。
「話すことは何もありません……が、お伝えだけしておきますね」
「……は?」
そうそう喧嘩なんてしない性質だから。
ドキドキと心臓が高鳴るけど。
「貴方のところにさかたんは返しませんし、今後もお渡ししませんので、そのおつもりで」
「……何、言って」
スマホの向こう側。
空気が凍り付いたのが伝わってくる。
「さかたんには今後一切近付かないで下さい」
「何言ってるの?彼と私は付き合ってるんだから、あなたにそんな事を言われる筋合い無いでしょ」
「もう一度言いますけど、さかたんに近付かないで下さい……もし破るようでしたら、然るべき所に申し出ますので」
「だから、何を言って……」
話しているうち、どんどん自分の怒りがピークに近付いていくのが分かった。
怒りに任せて酷い言葉を言いそうになるけれど、今ばかりは堪えなきゃいけない。
「さかたんに酷い事する人は全員敵です……容赦しませんから」
「だから……部外者のあなたに関係ないってさっきから言ってるでしょ!!」
「さかたんはセンラさんに連絡するって言ってました」
「それが、なによ」
「彼は約束を破るような人ではありません……それを一週間も連絡が無かったっていう事は、約束を守れない状態にさせてたんじゃないですか?」
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