僕はまふまふじゃない (ページ6)

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六話ページ6

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マンションに着いた。流石にここまで追っては来ないだろう。

「はぁ…ごめんね、いきなり走り出して。
大丈夫？」

『あ、はい…大丈夫です。
あの人、大丈夫かな…』

まだ気付いていないのか…危うく襲われかけていたのに。

ちゃんと説明してあげないとな…と思いつつ、俺も危ないやつと判断されることに気付き、もう少し時間が経ってからにしようと決めた。

「…拾って欲しいって言ってたよね？拾ってあげるよ。
君が望むなら」

笑顔を貼り付けてそう言うと、目を輝かせて俺の方を見た。
…なんだか心が痛む。

『お、お願いします！』

『でも…なんで急に？さっきはあんなに嫌だって言ってたのに…ありがたい限りですけど』

「あー…気が変わったってことで」

エレベーターに乗って自分の階数を押すと、彼女が控えめに声を掛けてきた。

『…あの、手…』

「あっ」

無意識に掴んだままだった手を、慌てて離す。
…逃げられるとでも思っていたのかな。

誘拐犯みたいだ、俺…

溜息を吐き、彼女の手を見ると、薄ら痕が付いてしまっている。
…俺、そんな強い力で掴んでなかったし、あのおじさんか。

もう一発食らわせておけばよかった、と後悔しつつ、自分の部屋の階に着いたのでエレベーターを降りる。

久しぶりに来た自分の部屋。誰にも言っていない、俺だけの部屋だったのに、見ず知らずの女の子を連れ込もうとしている。

…冷静になるな。後悔するのは部屋に入ってからにしよう。

「…ただいま」

『おかえりなさい？』

びっくりして隣を見ると、彼女は首を傾げながら微笑んでいた。
…癖で、一人でも「ただいま」って言っていたけど、「おかえり」って返されるだけで、特別に感じるなぁ。

「…ただいま、は？」

『……ただいま…です』

「おかえり」

へへ、と笑った彼女につられて俺も笑う。

冷静になっても、後悔するだけじゃないかもしれない…なんて、少しだけ思った。

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