五話 ページ5
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「…とにかく、見ず知らずの人に拾って貰おうとか駄目だからね!
それじゃあ俺はもう行くから」
『あ、…はい。ありがとうございました』
彼女に背を向けて歩き出す。
流石に同情で家に上げることなんて出来ない。
だって…
「あれ〜お嬢ちゃん一人?しかも大きなカバン持って…家出かい?
おじさんの家、来る?」
驚いて振り向くと、彼女がおじさんに声を掛けられていた。
小汚いおじさん。酔っ払っていて、顔を真っ赤にしてニヤニヤしている。
…あれは誰がどう見ても駄目なやつだ。きっと断るだろ…
『え、いいんですか?』
「…は?」
まさか付いて行くの?明らかに怪しい、というかやばい人なのに?
…世間知らずにも程がある。誰だって分かるでしょ…
溜息を吐いている間に、おじさんが彼女の手を掴んだ。力が強かったからか、眉を顰める。
助けるべき?いや、やっぱり駄目。
だって、俺が女の子を家に連れ込んだ、なんて拡散されたら、炎上するし…
…あぁ、もう関係ないじゃん。俺、まふまふって名前は捨てたんだから。
炎上はしていなくても、今頃騒ぎにはなっているだろう。誰にも相談せずに消えたんだから。
…だったら別に、女の子を連れ込んでも問題ないじゃん。
相川真冬が、女の子と遊んじゃいけない理由も、彼女を作っちゃいけない理由も、存在しないんだから。
「…ねぇ、おじさん」
「あ?」
「その子、俺の彼女だからさ…
離してよ」
「なんだ…っで!?」
そらるさんに教えて貰った、変質者にあった時の対処法を実践し、おじさんの手から離れた彼女の手を掴んで走り出す。
何だか悪い事をしているみたいで、少しドキドキした。
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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2019年2月2日 17時