四話 ページ4
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『教えて頂き、ありがとうございます』
ペコリ、と頭を下げる彼女。
さっきも思ったけど、お辞儀が綺麗。
「ううん、この位のアドバイスしか出来なくてごめん。応援してるよ。
それじゃあ…」
バンドを抜けさせられた子に、応援してるよ、なんておかしい気もするけど…
『あっ、あと!』
「ん?」
焦ったように俺を引き止める。
…まだ、聞きたいことがあるのかな?
『こ、この近くにある、安いホテル…知りませんか?』
「え、安いホテル?ビジネスホテルならあった気がするけど…
この辺に住んでいるんじゃないの?」
そう聞くと、僅かに俺から目を逸らして、『じ、実は…』と小さな声で話し始めた。
『訳あって家出、というか追い出されたというか…』
「それでその大荷物…」
俺と同じように、パンパンに膨れ上がった旅行カバンを見て、一人頷いた。
『大体どのくらいなんですかね…』
「確か…一万円前後だったような」
『えっ』
目を見開き、慌てて財布の中身を確認する。
…いくらだと思っていたんだろう。そして足りるのかな…
『…もって、十日』
「その期間でバイト代を期待するのは難しそうだね…友達に頼るのは?」
『…私の仲良い友達、皆遠くに行っていたり、彼氏と住んでいたり、ルームシェアしていたり…あまり頼れそうにないです』
「わぁ…それは困ったね…
あ、親と仲直りするのは?」
『絶対に無理です。もう顔も見たくないと言われました』
「何しでかしたの、一体…」
そこまで言わせるなんて、相当なことをしたんだろう…他人だから踏み込まないけど。
財布の中身を見て愕然としていたが、バッと顔を上げて、俺を見る。
…嫌な予感がする。
『お、お願いします!拾って下さい!!』
「え、えぇ…」
貴方しか頼れないんです!とさっきも聞いたような台詞を言いながら、目を潤ませて上目遣いをしてくる。
…彼女が今まで犯罪に巻き込まれなかったのが、不思議に思えてきた。
「はぁ…あのね、簡単に男に向かって「拾って下さい」なんて言っちゃいけないんだよ?
君、可愛いんだから襲われるよ?」
『か、かわ…!?お世辞以外で、初めて言われました…』
いや、可愛いんだよ君。近くで見るとより一層分かるけど。
お世辞だと思っていただけで、本当に可愛いって言われてたんだろうな。
っていうか、そこじゃない!
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作者名:鈴里風夢 | 作成日時:2019年2月2日 17時