僕はまふまふじゃない (ページ3)

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三話ページ3

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「…つい、最後まで見ちゃった」

やっぱり、バンドっていいなぁ…かっこいい。
しかもEscapismに負けず劣らず、皆上手かった。

参加者のほとんどが、十代後半から二十代前半らしい。凄すぎる。

「Escapism…なんか俺がしていることも、現実逃避のような気がしてきた」

はぁ…と溜息を吐く。
まぁ、たとえ現実逃避でも後戻りはしないけど。

ライブハウスを離れ、家に向かう。
…あぁ、もう夜じゃん。夜ご飯の用意しないと…

『あの…っ』

「へ？」

くいっと袖を引かれて振り向く。
もしかして、リスナー…？

『さ、さっき、ライブハウスに来ていましたよね？』

「え、あ…うん」

リスナーだったらどうしよう…頼れる人はいない。
自分の力で何とかしなきゃ…

『音楽関係の人、ですよね？ギター背負ってるし…』

リスナーじゃないのか…

ホッとしたものの、やっぱり“まふまふ”に毒されているんだな、と思った。

「一応、音楽関係の人間だけど…君は？」

『私、Escapismのボーカルの片方です。
あの…私に何が足りないのか、教えて貰えませんか！』

あぁ、さっき音域が声域に合ってないって感じた子か。髪を下ろしているせいか、雰囲気が変わっていて気付かなかった。

でも、なんで俺に？

「メンバーに聞けばいいんじゃないの？」

『バンドは…抜けました。色々あって。
頼れるのは、貴方しかいないんです！』

「え、抜けたって…デビューの話は？」

『……ボーカルは二人も必要ない、って言われて』

酷い…夢を見させておいて、そんな理由でバンドを抜けさせるなんて。

「…でもなんで俺？他にも沢山の人がいたのに」

『貴方だけが、私のことを見て首を傾げていました。きっと、私の足りない所が何か、気付いたんだと思って』

「ごめん、無意識だった…」

歌を聞きながら首を傾げるなんて、最低行為だ…申し訳ない。

「それで…」と再度聞いてきた彼女に答える。

「えっと…
音域が声域に合ってないように思った。君が下のハモリで、もう一人の子が上のメインだったでしょ？
逆の方がいい。君にぴったりの音域は、もう少し高め」

『…やっぱり、そうですか』

そう言って、ぎゅっとスカートの裾を握りしめた。
やっぱり…ってことは、気付いていたのかな。

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