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「お姉はこの後どうするの?」
『彼方と出かけるよ』
「朝から出かけないんだ?」
『朝は仕事の打ち合わせがあるんだって。だから、昼から。』
「へえ!何するの?」
『……結婚式場見学と、予定をたてにいくの。』
私がそう告げると、楓は手を叩いて喜んだ。
私と彼方の仲を案じてくれていたのは楓も同じ。そんな楓にこの報告ができるのはとても嬉しい。
「結婚式いつやるの?」
『楓は私の誕生日にしてくれたから、私は楓の誕生日にしようかと思ってるの。』
「ほんとに!?誕生日にお姉の結婚式が見れるなんて最高のプレゼントだよ〜!」
お姉に似合うのはね〜、と楓がドレスの話をし始める。悪いなと思いながら聞き流していると、スマホが震えた。
[どこにいる?] [迎えに行くよ]
と彼方からのメッセージ。
『ごめん楓。彼方、用事終わったみたい』
「あ、ほんと?じゃあ今日はここまでだね」
『そうだね。東京には明後日までいるから、またご飯でも食べに行こうか。』
「そんなに頻繁に会わなくて大丈夫だよ。来月からはこっちに住むんだし、急がなくても。」
『それもそうだね』
しばらく一人でゆっくりしてから帰るらしい楓に手を振って、喫茶店を出る。
駐車場に停められていた車の一つに、彼方が乗っているのを見つけた。
『おまたせ』
「全然待ってないよ。…じゃ、行こっか」
『うん』
車のハンドルに置かれた彼方の手を見ると、いつもは首にかけてあるはずの指輪が薬指にはまっていた。
『今日、なんの打ち合わせをしたの?』
「アニメの主題歌歌うことになったんだ。今日はそれの打ち合わせ。」
『タイアップってこと?』
「うん、そう。」
『よかったね、おめでとう〜』
ありがとう、と笑う彼方。
車を30分ほど走らせた後、結婚式場についた。高級ホテルでもあり、広い庭もあるため、彼方と二人でここにしようと決めた。
事前にコンタクトをとっていたウェディングプランナーさんに連れられ、ロビーラウンジの奥の席に座る。
隣に座る彼方の顔が少し強張った気がした。
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こん - 無理しない程度に頑張ってください!応援してます! (2018年10月9日 18時) (レス) id: bc3ee8c138 (このIDを非表示/違反報告)
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