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「どうしよう、翔太」
「どうしようもなにも…彼方さんから何も言われないんだし、何もできないよ。真冬。」
「彼方さん…」
あのツイートがされてすぐ、僕は彼方さんにLINEを送った。
でも、いくら待っても既読がつくことも、返事が来ることもなかった。
「真冬、XYZのバレンタインライブで会うじゃん。」
「だけど、彼方さん……触れられたくないだろうし、」
「あのね、いずれは触れないといけない問題なんだよ。これは。」
「…」
翔太の言う通りではある。
きっとこれから歌い手としての活動やAfter the Rainの活動を続けていく上で今回の件はそらるさんと一緒に向き合っていくしかない。
…僕は無力だったのだろうか。
たった1人の相棒の危機に気づかなかった。これまでのそらるさんの言動を振り返る。…様子がおかしいことだってたくさんあったじゃないか。
「ほらほら、そんな難しい顔しない!俺たちは俺たちでやれることやろ?」
「…っうん、そうだね。翔太」
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そんなこんなで、XYZのバレンタインライブになった。
リスナー含め、演者達はそらるさんの出演を心配していたが、当の本人は会場にやってきた。
集合時間ぎりぎりに、最後に楽屋に入ってきたそらるさんは…ヘラ と笑った。
リハーサルを行っても、そらるさんの口数は少ないまま。
「そらるさん。」
「あぁ、まふまふ。…今日、頑張ろうな」
「……はい」
そらるさんのヘラヘラとした笑い方。
何も聞かないで、というような反応。
僕以外の演者達もそれを察して、"いつも通り"を作る。
たくさんのリスナーさんが僕らを心配して、応援してくれた。
ステージ上のそらるさんは、いつもよりも落ち着いて……いや、元気がないというのが正しい言い方だろう。
やっぱり放っておけなくて、たくさん話を振って喋った。
あなたの居場所はここにあるよ、大丈夫だよって、伝わったらいい。
曲中そらるさんの顔をガン見したり、追いかけたり。戸惑ったそらるさんは逃げたりしたけど、ずっと構った。側にいた。
アンコールの後。僕たちが最初に捌ける予定だったから、そらるさんの衣装の裾を引っ張って、ステージの袖を指差した。
そらるさんがこくりと頷いたのを確認して、リスナーのみんなへお辞儀してから、隣を歩いてそのままステージから去る。
幕の中に入る直前、そらるさんは僕の背中をポンポンと叩いた。
「ありがとう、」
そらるさんは笑っていた。
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こん - 無理しない程度に頑張ってください!応援してます! (2018年10月9日 18時) (レス) id: bc3ee8c138 (このIDを非表示/違反報告)
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