3 ページ13
「そーかそーか!叶歌はそんなにすごいか!」
「はい、すごいです。」
とても嬉しそうに言う田中先輩の気持ちは、私もわかる。天の上の存在だと思っていた及川さんに影山くんの実力が認められていると感じた時の、あの誇らしい気持ちと同じなのだろう。
「春高は、私も新山女子にくっついて行くので、時間合ったら叶歌先輩と応援しに行きます!」
「おぉ!心強いぜ!」
「っシャア!!そうと決まったら練習あるのみだな!休憩終わりだー!」
勢いよく立ち上がった西谷先輩が、思い切り羽を打った。
それを合図に皆立ち上がり、羽子板を振り上げる。
「つーか影山全然喋んねぇじゃねぇか!どうした!風邪ひいてたらぶっ飛ばすぞ!」
「ひいてません!」
「Aさんの前だから照れてるんですよ!照れ山!」
「うるっせぇ!日向ボケ!」
悪態をつき、走り回りながら羽を打つ姿が面白くて、そして、なんだか懐かしくて声を上げて笑った。
つられて私も立ち上がったけど、そういえば私は羽子板を持っていないんだった。そろそろ汗が冷えてきてしまうだろうか、否、まだ大丈夫か。と考えた瞬間、チラと私を見た影山くんと目が合った。
「ほら」
「あ、ありがとう。」
カンと気持ちのいい音を立てて羽を高く打ち上げ、余裕が出来たそのうちに影山くんは私に羽子板を渡す。
少し驚きながらもそれを受け取って、慌てて羽を落とさないように田中先輩たちの輪の中に入った。
影山くんには何でもお見通しなようだ。皆バレーしか考えていないなんて言うけれど、私よりもよっぽど周りが見えてるし、私なんかにはもったいないくらい、本当にいい人だと思う。
「おぉ!ちゃんと彼氏してんじゃねぇか影山!」
「見直したぜ影山!」
「影山!」
それに気づいた西谷先輩が羽を打ちながら言い、続いて田中先輩と日向くんが続いた。日向くんは何も思い浮かばなかったのか名前を呼んだだけだったけど。
影山くんは何も言わずにそっぽを向いていて、少し照れているようだった。
人としても、バレーでも、私はまだまだ影山くんに敵わない。
もっと、もっともっと成長しよう。そう心に決め、羽を追いかけ、打ち上げた。
354人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです!いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時:2022年10月10日 21時