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研ぎ澄まされた剣に泥は似つかない 五 ページ7

生まれた隙に土方は躊躇(ためら)いなく北大路へ一撃振り下ろす。
 北大路は川に倒れながらも刀で受け止めた。

「俺達はあらゆる型を幾千万年も身体に叩き込み、その対応策も幾千万年と身体に叩き込んでいる。その中には――Aさんの剣もある」

 北大路が刀を押さえながらも言い、土方はピクリと反応する。

「Aさんの型を見て体に覚え、俺はその対策も会得している」
「ククッ、Aの型だァ? てめーはアイツの深淵を見た気でいるかも知れねーが……奴の剣はそんなに簡単なものじゃねェ。奴の中には、何人もの侍がいやがる。比喩じゃなくそのままの意味だ」

 北大路に押し返され、離れてまた斬りかかりながら土方は言葉を続ける。

「ありゃ特定の型に収まらねェ。何人もの侍の剣技を、身に覚えるんじゃなく文字通り『吸収』する。アレの対策なんか、てめーや俺にゃできねーよ」

 よりAを知っているのは自分だとでもいうように、土方は誇らしげに笑って北大路を斬り飛ばした。

「チッ……知った気でいるのはどっちだ。彼女の剣を間近で見ておきながら、勘や直感の才能に溺れて努力を怠っている貴様に……あの人の剣を語る資格などない!!」」

 北大路の剣撃が二発土方に食らいつき重い音を響かせる。
 土方は顔を切りつけられて鈍い声を漏らした。

「!!やばいあの人ホントにとんでもなく強い!助けに入りましょう!」

 新八は慌てて部屋を出ようとするが、近藤が前に手を出して止めた。

「近藤さん!」
「スマン。手は出さんでやってくれ。ただの喧嘩剣法じゃアレに勝てねーのは、アイツが一番知ってるさ。なァ、トシ」

 近藤は柔らかく笑い、必死に戦う土方を見て昔のことを思い出した。

 近藤は江戸に来る前、剣術道場をやっていた。
 小さい頃の沖田と共に師匠にしごかれていたが、そこには巷を騒がす悪ガキがいた。

 長く伸びた髪を後ろで結った、少し目つきの悪い少年。

 喧嘩の強い一匹狼で、近くの道場の連中に片っ端から喧嘩を売って暴れ回っていた。

 血の気の多い田舎道場の者達は談合してその少年を襲ったのだとか。
 彼は多対一でも物怖じせず、多勢を前に斬り倒していった。

 それでも一人では部が悪く、ボロボロになった少年は近藤に引き取られた。

 少年は愛想が悪く、近藤達の地道な稽古には否定的なことを言っていた。
 しかし、彼は道場の扉の前でジッと座り込み近藤達の稽古をいつも噛みつきそうな目で見ていた。

研ぎ澄まされた剣に泥は似つかない 六 終→←研ぎ澄まされた剣に泥は似つかない 四



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設定タグ:銀魂 , 逆ハー , 愛され   
作品ジャンル:アニメ
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刹那*桜(プロフ) - アイナさん» あけましておめでとうございます!10個目でも見に来てくださって本当に嬉しいです。ありがとうございます! (2023年1月6日 4時) (レス) id: f89dd253f0 (このIDを非表示/違反報告)
アイナ(プロフ) - あけましておめでとうございます。そしてシリーズ数二桁突入おめでとうございます。今年もぜひ、夢主ちゃんとお兄様の活躍と銀魂キャラたちの奮闘を拝見させてください! (2023年1月2日 10時) (レス) id: 503469204d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:刹那*桜 | 作成日時:2023年1月1日 3時

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