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「じゃ、行ってくる!」
私の返事を聞いた途端に、スキップでもしそうな勢いで坂田さんの元へ向かった同僚。
大丈夫かな、坂田さん…
遠くから見ると、案の定、同僚にグイグイ迫られて少し焦っている坂田さんが見えた。
こちらへ助けを求めるような視線を向けられた気もしたけど、気付かないふりをして残りの作業を高速で進めた。
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「あ、A、やっと来た!」
「ごめん遅くなって、坂田さんも、ごめんなさい」
「いや、今日は俺が勝手に来ただけやから。お疲れ様。」
目を合わせてお互い少し笑うと、それを見た同僚がニヤニヤする。
「じゃ、Aをよろしくお願いしますね、坂田さん」
そう言い残し、私の肩をポンと叩いて、お先!と、同僚は先に帰っていった。
「…帰りましょうか」
「…せやな」
またスキップでもしそうな足取りの同僚を見送った後、坂田さんとまた顔を見合わせて、ふふ、と笑い、家路についた。
*
電車を降りて、家までの道を歩く。
「そういえば坂田さん、私の同僚にはなんて言われたんですか?」
電車がほぼ満員で大した会話も出来なかった為、ようやく今聞けた。
「え?うーん…俺の仕事のこととか…やなあ」
一応、音楽関係ですー、って言っといたけど、と付け加えた坂田さんだったけど、どうにも怪しい。
「…本当にそれだけですか?」
私の言葉を聞いた坂田さんが、分かりやすくビクッと肩を震わせる。
「え、あ、いや、…それだけやで?」
「…さすがに分かりやすすぎますよそれは」
元々嘘のつけない性格もあって、坂田さんは誤魔化すのが下手だ。
口調と表情がすぐ慌てたように変わって、こちらが思わず笑ってしまうほどだった。
そのまま、答えを求めるようにじっと見ていると、観念したように坂田さんが前を向いたままボソボソ話し始めた。
「えーと…Aの何処が好きなんですかー、とか、将来どんな風に考えてますかー、とか…」
「………」
何も言えなかった。
とりあえず、踏み込みすぎた質問に、同僚には今度ちゃんと言っておかなきゃ…と強く思った。
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しろ鮎(プロフ) - 白雨さん» わー!白雨さーん!コメント下さってたんですね、返事がめちゃくちゃ遅くて申し訳ないです…ありがとうございます!ハロウィンにかこつけてイチャイチャしてるだけな感じですが(笑)、書いてて楽しかったです。次も今準備中なので(12月なのでアレです)良ければ〜! (2020年12月3日 22時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - 新作出してらしたんですね……!今回の短編集も四人の特色がよく出ていて愛らしさを感じる雰囲気でした!ハロウィンのお話を書かれるとは予想していなかったので新鮮な感じです(笑) やっぱりしろ鮎さんの書くお話大好きだなーと思いながら読ませて頂きました(*´艸`) (2020年11月24日 22時) (レス) id: f9e7441818 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - ちぇろさん» ちぇろさんご無沙汰してました、今作もお付き合いありがとうございました!一つのテーマを設けて作るの楽しかったので…またやろうかな?と思い始めてしまいました笑 またよろしくお願いしますー! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - リセットさん» 初コメありがとうございます、前作も読んで下さったんですね…嬉しいです!ときめきをお届けするのが私の作者としての目標なので、リセットさんにはお届けできたようで良かったです〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
しろ鮎(プロフ) - せせ@れいとうるぅれっとさん» コメントありがとうございます、最後までお付き合い頂きありがとうございました〜!自己満足の小説なんですが、お楽しみ頂けて良かったです!またよろしくお願いします〜! (2020年10月30日 8時) (レス) id: dffb4b3955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しろ鮎 | 作成日時:2020年10月11日 6時