【短編集】Lovers in Halloween【u/s/s/s】

ver.violet ページ16

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ver.violet




「うー、ちょっと寒いな…」

秋も深まった、深夜に近い時間。

会社の飲み会帰りの私は家路を急いでいた。


お酒を飲んでいるうちは良かったけど、少し経った今は、昼間よりぐっと下がった気温も相まって、身体がどんどん冷えてくる気がする。



今の会社に出向で来て、早数ヶ月。

少しずつ業務にも慣れてきて、社内の人たちともそれなりにコミュニケーションが取れるようになってきた。



(…早く帰ってお風呂…は入れないか、あったかいシャワー浴びて寝よ)

とにかく温まりたい。
シャワーの後すぐ布団に入れば何とかなるかな。


…今は、温めてくれる人も側にはいないし。




出向するにあたって、以前住んでいた所から一人出てきた私は、その部屋に未だに住んで私を待ってくれている彼氏の事を思い出した。


紫色のさらさらの髪に、整いすぎた顔。
左目の下の泣き黒子が色気を増していて、でも、笑った時には八重歯が覗いて、男の子みたい。
ゲームとアイドルが大好き、自分のリスナーと自分のグループのメンバーも大好き、な、ネット中心の活動者。

それが、私の彼氏、志麻である。


…本当に色々な事があって、同棲中だった家を私が一旦出て離れて暮らしているのだけど。


L◯NEはちょこちょこくれる(たまに公式L◯NEのメッセージを私個人宛だと勘違いしちゃうことはあるけど)し、たまーに電話もくれる。


そんなに遠くに出向になった訳じゃないのに、仕事がバタバタしていて私も同棲してた所には戻れず、彼は彼で忙しくしているので、離れて暮らし始めてから、まだ会えていない。


(…今頃、何してるかな…志麻くん)

足を進めながらも、ふと、彼のことを思った。

「A、」と、愛おしそうに私を呼ぶ彼の低い声を思い出して、ひとりでドキドキしてしまった。




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