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仕事_24 ページ7

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『あ、ああ、こちらこそすまない』





Aは建物の角から現れた青年と衝突する。


転びこそしなかったが、政府での出来事もあって三日月と一期が慌てて駆け寄ってきた。


それを一瞥して青年はもう一度謝り、急いでいるのでと反対側の通りへ歩いていく。





?「____」





去り際、青年の深く被った帽子から 一瞬だけ瞳が覗いた。





『……人間にしては珍しい色だったな』



三日月「Aや、あまり離れるでないぞ」



『気を付けよう。


………一期…?』





Aから数歩離れたところで、青年の去った方を見て愕然と目を見開いたままの一期がいた。





_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



一期 side




何故。何故。どうして。





「……っ…………」





心臓が不穏に跳ねる。


目の前が赤と白に点滅して、あらゆる音が遠のいた。



今、A殿とぶつかった男は。


……いや、有り得ない。だって、彼奴は。





「……ぁ……っ…!」





喉が痛いほどに渇いて息が詰まる。



彼奴は………!





『………い…おい、一期…?』



「っ!!」





A殿の小さな手が私の腕を掴んでいた。


いつもと何も変わらない表情だが、そっと私を見上げる瞳は 心なしか揺れている。


ああ、そんな不安そうな目をなさるな。


といっても、こうさせてしまったのは私か。





「申し訳ない。少し考え事をしていたもので」



三「だが、顔が真っ青だ」



『具合が悪いのか。どこかで休憩するか……いや、それよりも早く帰ったほうがいいのか』





私の腕を掴んだままオロオロとするA殿。



…とても愛らしい。



先程の動悸が嘘のように引いている。


A殿の手の温もりが凍てついた心を溶かしていくようだった。





「ご心配には及びません。私は大丈夫です。皆も待っている故、帰りましょう」





きっと、私の見間違いだ。


彼奴がいるはずがない。


このようなところに、いるはずが。


だって彼奴は。




あの日から未だに生存も行方もわかっていないのだから。

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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年5月17日 0時

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