仕事_22 ページ5
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三日月と一期は、一瞬何を言われたのか理解できずに黙する。
男「年端もいかない、世間知らずの子供。
本当にあんな小娘、己が尽くすに値するほどの者なんです?
お二方 付喪神でしょう。神の矜持は持ってないので…す…」
そこまで言って、男は瞠目した。
戦慄が貫き、全身の血液が音をたてて凍結する。
「「言いたいことは、それだけか」」
二人の戦装束が不自然にふわりと揺れる。
莫大な神気が風となって放たれたのだ。
それは、Aを侮辱されたことへの純粋な怒りだった。
男は畏縮して動けなくなる。
言い過ぎた。
「黙って聞いてりゃあ、よくもそこまで見下せたもんだな」
いつの間に話を終えたのか、少年とAが扉の前にたたずんでいた。
少年「この方への侮辱は俺への侮辱だ。わかるよな?」
男「…っ」
ああ終わった、と男が今世を諦めかけた時、その場にそぐわない高めの声が静かに響いた。
『今、私侮辱されてたのか』←
少年「ほんと君ブレないよね」←
『それよりいいかげん手を離せ』
少年「え〜」
三日月たちと話す時とは口調がまるで違う少年がAの手を握っている。
それを見て二人の怒りの矛先が少年に向いた。
男はそっと胸を撫で下ろす。
だが散々馬鹿にした相手に救われてしまったので、なんとも後味が悪い。
『一、二、三、四、五…』
少年「ん?」
『指が一本でも触れていれば三日月がお前の首を飛ばすらしい。
五本触れているから、五回飛ぶなと思って』←
少年「やめて?!」
同僚がばっと手を離した隙を見て、Aは一期たちのもとへ駆け出す。
一期「A殿!部屋で何をされましたか」
三日月「俺はまずあの少年の首を取ってこよう」
『落ち着け二人とも。私は無事だし、ここで首を取ると後々掃除が大変だ』←
少年「え、やっぱり俺の首飛ぶの?」←
やめてよやだよと騒ぐ少年を黙殺し、Aは男のもとへと歩み寄った。
三日月と一期が引き止めようと口を開きかけたが、Aはそれを目で制する。
対する男はバツが悪そうに顔を背けた。
『食料を定期的に送ってくれているのは貴殿か』
男「え、ええ…」
『ああ やはり』
その声色が温かいものであったので、男ははっと彼女を見る。
まっすぐ自分を見つめる瞳に、先程の発言を責める色はなかった。
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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年5月17日 0時