仕事_46 ページ29
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薬研「まさか、ずっと待ってたのか」
獅子王「先に寝とけって言ったのに…」
堀川「こんな寒い中…風邪を引いてしまいます…」
こうは言うものの、彼女が袿を羽織ってまで自分たちを待ってくれたことに、喜びを隠せないでいた。
三日月はAの冷えきった右手に触れる。
しばらくそうして、ふいにはっと目を見開いた。
一期「三日月殿?どうされた」
三日月は手をはなすと、口元を袖で隠してそっぽを向いた。
三日月「……随分と、冷えておるなぁと」
一「…確かに……このままだと本当に風邪を召されてしまう」
薬「とにかく、部屋へ運ぼう」
薬研が辞書を閉じて持ち、一期がAを横抱きにして審神者部屋へと向かった。
堀「ここで解散にしますか?」
獅「そーだな!特に手入れも必要ないし!
んじゃ、おやすみ!」
堀「三日月さんも、おやすみなさい。あの二人には僕から伝えておきますね」
三「……あ、ああ。おやすみ」
二人が去っていくのをぼぅと見届けたまま、三日月はその場を動けないでいた。
三「(………あれは…)」
Aの右手に触れた時、その小さな手で握りしめられていたものが垣間見えた。
それは三日月がAに贈った髪飾り。
おそらく、気がついたのは自分だけだ。
否、自分一人で充分。
三「………なんと」
きっと気休めにしかならなかったであろう。しかしそれでも、Aは。
三「なんと…健気な……」
三日月は仄かに桜を散らしながら、静かに三条部屋へと足を進めた。
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審神者部屋についた薬研たちは素早く茵を敷き、Aを寝かせた。
薬「袿は多めにかけとくか」
一「そのほうが良いだろうね」
三、四枚の袿をかけ、薬研はそっと嘆息する。
薬「ったく、こんな寒い夜に外で寝て、風邪でも引いたらどーすんだ」
まぁ、そんときは俺が看病してやるからな。
心の中でそう付け加えて、薬研は兄を振り返った。
薬「俺らも部屋戻るか」
一「ああ」
一期はAの頬を優しく撫でる。
一「(待ってくれて、ありがとう。おやすみ…A…)」
そして薬研を追うように部屋を後にした。
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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年5月17日 0時