仕事_43 ページ26
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ほつぎ「はじめまして。本日から見習いとして三週間ほどお世話になります、ほつぎです。将来立派な審神者になるためにも、精一杯励みたいと思います!」
集まった男士らの前で挨拶をし、丁寧に頭を下げたほつぎ。
次いでAが付け加えた。
『ほつぎは既に皆の顔と名前を覚えている。気兼ねなく話しかけてやってくれ』
獅子王「全員知ってんのか!」
ほ「ええ、見習いのお声がかかるまでは座学に専念しておりました」
ほつぎは少し恥じ入ったように応える。
それにより緊張が解れたのか、その後もいくつか質問の声があがった。
大広間の隅で、Aはその様子を微笑ましげに見ている。が、相変わらず表情は乏しい。
『ほつぎ、今日は特に仕事はないから、ゆっくりして本丸に慣れてくれ』
ほ「わかりました!」
『薬研、案内を頼めるか』
薬研「おう!任せろ」
ほ「よろしくお願いします!」
その後は皆、部屋に戻ったり、厨に行ったり、スコップと共に庭へ出たりして解散となった。←
ほ「ずいぶんと広いんですねぇ…」
薬「まぁな。この渡殿を通って、こっちが厠で、あっちが風呂だ。で、ここを真っ直ぐ行った突き当たりが厨で………お、いち兄!」
案内していると、部屋に向かう途中の一期と会った。
彼は何かを言いかけたが、薬研の隣に立つほつぎを一瞥すると、
一期「…………失礼致します」
そのまま横を通り過ぎていった。
薬「あ、ちょっ……いち兄……?」
ほ「僕、何かしてしまったでしょうか…?」
薬「いや……元々いち兄は外の者に警戒心を抱きすぎてるところがあってな」
ほつぎは首を傾げる。
ほ「過去に何かあったんですか?」
薬「ああ、ちとな…」
ほ「そうなんですか…
では彼は、そのトラウマを引きずって、何年もずっと苦しんでいるんですね」
薬「そうだな…………?」
薬研はふいにほつぎを振り返る。
ほ「どうかしましたか?」
その顔は白い布に覆われていて、どんな表情をしているのかはわからない。
薬「いや、なんでもない。次はこっちだ」
だが、薬研にはその声がほんの一瞬、
愉しさで弾んでいるように聞こえた気がした。
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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年5月17日 0時