仕事_40 ページ23
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『………寒い』
寒さで目が覚めたA。日はすでに昇っていて、わずかに開いた妻戸から差し込む朝日が眩しい。
『(流石に単衣一枚では寒いか…)』
当然だ。
今は十一月の終わり。あと数日で師走に入る、冬真っ只中だ。
Aは巫女装束に着替え、上に袿を羽織って簀子に出る。
薬研「ん、おはよーさん」
『おはよう薬研。今日の朝餉は何だろうか、お腹空いた』
薬「あんだけパフェ食べてから寝たのにもう消化したのか」
昨日、Aは夕餉の後にまたパフェを食べていた。三杯も。
薬「(ありえない量食ってんのに全く肉つかねーよな…胃にブラックホールでもあんのか?)」
『人体の構造上、胃の中でブラックホールは飼えないぞ。胃酸でやられる』←
薬「ブラックホールは生き物じゃ……って、は?」
歩みを止めて薬研は傍らの少女を凝視した。
Aは、どうした と彼を振り返る。
薬「い、今、A、俺の心読んだのか?」
『そんな大層なことはしてない。なんとなく、考えていることがわかっただけだ』
ん、えーと、あれだ。とAは宙を見る。
『いっしんでっしん?でんしんいしん??』
薬「以心伝心か?」
『多分それだ』
薬「意味が若干違う気がするが…
……まぁ、一緒に暮らしてっから可能性としてはなくはないのか…」
『一緒に暮らすとなるのか?』
薬「いや、そうじゃなくってな、以心伝心ってのは言葉を使わなくてもお互いに心が通じ合うことで」
『ほう』
薬「まぁそれだけ近い距離にいるというか、親しい間柄だとか、お互い想いあってる、と…か……」
言ってから、急に恥ずかしさを覚えて薬研はうつむいた。耳まで熱い。
Aはそんな薬研を不思議そうに見つめる。
『辞書にはそんな難しいこと書いてなかったぞ。しかも一言だ』
薬「な、なんて書いてあったんだ?」
『コードレス』←
薬研が床に突っ伏したのは言うまでもない。
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『今日は夜に出陣してもらいたい』
朝餉が終わった大広間で、Aはそう切り出した。
三日月「構わぬが、なにゆえ夜なのだ?」
『昼間は皆本丸内にいてほしい』
髭切「何かやるのかい?」
『ああ、今日見習いが来るからな、顔合わせしたほうが良いかと』
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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年5月17日 0時