仕事_36 ページ19
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切迫した叫びがAの耳朶を打った。
数瞬遅れて、地面がひび割れる。Aは視線を下へと走らせた。
『……っ』
上ではなく、下だったか。
Aは地面へ向かって反射的に結界を築く。
しかし、ぎりぎりで間に合わない。
鶴丸「……くそっ!」
Aを助けようと意識が逸れた瞬間、鶴丸の頬に刃が掠った。油断すれば助ける前にやられる。
『_____!』
桁違いに大きい敵と正面衝突して 霊力が爆発する。
悲鳴を呑んだAは、そのまま跳ね飛ばされた。
骨喰が地を蹴り、落下する寸前のAを受けとめる。
ぐったりと力なく瞼を閉じたA。骨喰はその口元に手を当てた。
かすかに呼吸をしている。首筋に触れると、力強い脈動が伝わってきた。気を失っているだけだ。
彼にしては珍しく、肺が空になるまで息を吐き出した骨喰は、Aを抱えなおす。
そして、敵の返り血をあびたまま立ちすくんでいる鶴丸を見やる。
骨喰「心配ない、無事だ」
即興で結界を築いたのがAを救った。
でなければ、あれだけの力を持った検非違使の攻撃をまともに食らって、無事でいられるわけがない。
全身の血の気が一気に下がった鶴丸は、震えながら息をつき、肩越しに敵をぎっと睨みつける。
立ち昇る怒気が凄まじい神気とあいまって、残った検非違使たちは凍りつき、一瞬ののちに逃亡を試みた。
鶴「逃がすか………!」
低く唸って、敵の胴を片っ端から叩き斬っていく。
音もなく距離を詰め、腰を屈めて薙ぎ払い 次々と両断していくその姿は、骨喰をも戦慄させた。
破片すらも残らず全てが消えて、ようやく鶴丸は刀をおさめる。
骨「……鶴丸………」
鶴「はっはっ、驚いたか?」
まるで血の池で泳ぎでもしたかのように、彼は朱に染まっていた。
骨喰に駆け寄り、Aに触れようと手を伸ばすが途中で止める。その手も赤黒い。
鶴丸「Aは気を失ってるだけみたいだな」
よかった、と心から安心したように微笑む鶴丸に、戦闘中の面影は全く残っていなかった。
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作者名:葛の葉 | 作成日時:2018年5月17日 0時