第2話 ページ2
あの電話から2週間。
Aちゃんの転入試験も無事終わり、引っ越し手続きも終えた。
という事で、今はAちゃんを迎えに行く為、Aちゃんの家へと向かっている。
よくよく考えたら女子高生と一つ屋根の下とか大丈夫なのか?
一応いとこだしセーフ?リスナーに説明する必要はあるだろうか、いや、まだ良いか。
まずは、Aちゃんだ。
ピンポーン
う「おばさん、渉です。」
〈…〉
あれ?返事がない。誰もいないのだろうか。
…ガチャッ
あ、開いた。
『………ぁ…わたるくん……』
う「っ……」
玄関から顔を覗かせたのは、俺よりも小さな、女の子。
『…今、丁度両親は、買い物行ってて……あ、入って…?』
Aちゃんは黒い髪は降ろしたまま白い肌を隠して、目を合わせないままそそくさと家の中へと入っていってしまった。
……これ、大丈夫なのか。同居いけるのか。
『渉くん、水と麦茶と緑茶とオレンジジュースあるけど…』
う「あー、じゃありょ…………」
…そういえば、昔からAちゃんはオレンジジュースが好きだったっけ。
う「……いや、オレンジジュースが良いな。」
『っ!…オレンジジュースね、分かった。』
う「あ、氷少なめで。」
『っ、うん…!』
心なしか、嬉しそうに笑った気がした。
『…あの、渉くん…』
う「ん?」
オレンジジュースで喉を潤しながらAちゃんを見ると、俯いて震えている。
う「え、ちょ、どうした…?」
『っ、ごめんなさい…!』
う「え、何が!?」
『これから…渉くんに迷惑かけちゃうから…。』
…あぁ、そういう事か。
う「いや、別に空き部屋は元からあったし、人1人増えた所で問題ないよ?」
『でも…お金とか…』
う「学費は口座引き落としだからおばさんが出してくれるし、生活費とかは一応俺も働いてるし大丈夫。」
『友達とか、彼女とか…』
う「あー…友達は、たまに来るかもしれねぇ…連絡なしに突撃してくるバカがいるんだ…それはごめん。」
『あっ、全然!気にせず呼んで!』
う「彼女はいないから。心が痛いからそれ以上はやめてくれ。」
『……ふふ、うん、分かった。』
……あぁ良かった。
まだ、昔みたいに笑えるんだ。
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まなつ(プロフ) - コメント失礼します。ただ一人の私自身を思ってくれる、本当の私を見てくれる、そんな優しい誰かがすぐそばにいる、それを気付かせてくれる誰かがいる夢主ちゃんはとても幸せですね。素敵なお話をありがとうございます (2020年6月25日 23時) (レス) id: c0717d53d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゲッティ - 奇遇、私も埼玉住んでる (2020年6月13日 18時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 心春さん» これは世界中で理不尽ないじめと戦う皆の話です。貴方の心に響いたのならきっと貴方も過去(現在かもしれませんが)経験がおありなのでしょう。「結局誰も助けてくれない、けれど何処かに助けてくれる大人は必ずいる」をテーマに書いておりますのでコメント嬉しいです。 (2020年5月26日 7時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
心春 - 泣いてしまいました。夢主ちゃんの周りに素敵な方達がたくさん居て、読んでいてとてもあたたかくなりました。これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます。 (2020年5月26日 0時) (レス) id: dd23ca9c81 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - しおさん» ありがとうございます。「貴方にとって優しい世界が何処かにある」をテーマに書いておりますので伝わっていたのはとても嬉しいです。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛 | 作成日時:2019年8月6日 12時