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「幼少期から感情を見せず、天宮一族の教育に従ってきました。しかしながら今まではお友達がいたからこその表情はとても賑やかなものでしたがどこか寂しく、そして虚しさを感じました」
執事は執務用の机の上にティーカップを置いて紅茶の用意を進めながら話を続け、俺は無意識にそちらの方へと目を向けた
虚しさと寂しさなんて子供の頃だけだったかもしれない。
今なんてそんな気持ちも潰れてしまった。
「しかしながらもA様とお話をするようになってからは僅かではありますが柔らかくなったような雰囲気を私は感じました」
何だって楽しみの中心にいるのはいつも仲間だと思っていたけど、どこか素直に楽しめるところが無かった
けれどAは気になったから、単に理由はそれだけだったけど呼んでみて楽しかった。楽しくて仕方がなかった
いつの間にか自分から着いていくなんて口にしたこともあったし面倒くさいと思う仕事も全て片付いてしまっていたこともある
「自らを犠牲にしてまで優しさを向けるA様は私から見ても素晴らしいお方だと思いました」
たまに締め付けられる胸の苦しさと笑顔を向けられた時の暖かさは全て彼女から来ていたような気がした。元気を分けてくれたのも彼女のおかげなのかもしれない
けれども色恋なんてしてしまえば民のことを放ってしまうかもしれないと俺は怯えていた。だからいっそ突き放してしまえばAから離れてくれると考えてはいた
でもあそこまで悪化するとは思ってはなくて本当は心臓が抉り出されるくらい酷く痛感した
「良い方に出会われたのですね」
執事は返事を返すとだけ言い残し、紅茶を置いて執務室を去っていった
そして一人だけになったからかなんだか気が急に抜けて手に持っていた資料を手放してAについて考えていた。
初めて記憶に刻まれるくらいの相手に出会った。
彼女を突き放したとしても今もどこかにいるんだろうか。謝らないといけないと後悔を促す自分も。
恋に落ちてはいけないからと強く抑制する自分も。
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ヨル(プロフ) - コメントありがとうございます!何とかひねりにひねって作品を良いものにしていきたいと思いますのでよろしくお願いします (2020年1月16日 20時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - この作品好きです!続き楽しみに待ってます! (2020年1月16日 20時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
パピヨンlove - ヨルさん» いやいや全然!バイト〜〜〜頑張れ!!!!!(元気玉)いつでも待ってるよ(イケウ``ォ) (2019年8月21日 1時) (レス) id: 96ecbd33f4 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - パピヨンちゃんおひさ!ありがとねー!!今、バイトとかの予定で中々更新頻度が下がってしまってね…気長に待ってて! (2019年8月11日 19時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
パピヨンlove - ヨルさん久しぶり!!!!作品面白いね。読んでて楽しいよ!!更新頑張って! (2019年8月11日 13時) (レス) id: 96ecbd33f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜紅茶 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2019年6月28日 15時