双黒(小)の妹は自分を置いて行った包帯の付属品を忘れることに決めたようで。

60話 ページ26

異能力を使うと男は“ぁ、ぁ゛あ゛”と悲鳴にならない悲鳴をあげ、そこそこ高かったビルから飛び降りた。


「……広津さん、今下に男性が落ちてきたと思うけどそれギルドの刺客だからトドメ刺しといて。」


『かしこまりました。』



そこそこ高いとは言っても、死にはしない高さのビルだったので、下で待機していた広津さんにトドメをお願いしておく。


すると耳に嵌めている通信機からはいつも通り渋い声が聞こえ、了解の意を貰ったので、あとは大丈夫だと判断し、その場にしゃがみこむ。



異能を使った代償が押し寄せてくる。
まるで、愛しい者を失ったかのような、



感じるものは寂寥感に喪失感、空虚感、


何れも何か、大切な者をなくしてしまったかのような欠落感が得られる。



溢れ出る負の感情、
それはここ最近兄さんとの距離で感じていたものと酷似していて、余計に泣きたくなる。


認めたく、無かったのだ、
兄さんとの距離が少しずつ、しかし確かに開いているのを、


何がそうしたのかは分からない、
けれど、今私が感じている感情を、兄さんが居ない今どうしたらいいいいのか分からず、


私は強く服の袖を握り締め続けた。



霞んでいく視界、
それは孤独や寂寥感からなる涙なのか、
それとも空虚感や欠落感からなる思考放棄なのかは分からない、



……けれど、私に頼れる人は一人も居らず、どんどんと悪くなっていく思考回路を止めるように私は静かに目を閉じた。

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