【文スト】参謀とは。7

シナリオとは。 ページ41

その契約は成立し、今に至る。


「無茶をしますね、貴女も」

『あんたを取っ捕まえられるんならどうってことないっての』


Aはハッと鼻で笑った。


その横を黒い特殊部隊"闇瓦"が通り、ドストエフスキーを囲む。
一人が手錠を持ちドストエフスキーの元へ行った。


「待て！其奴に触れるな！」


刹那、太宰の鋭い声が飛んだ。

けれどそれは叶わず、ドストエフスキーの腕に触れてしまった。
ドストエフスキーの口角が上がる。


ゴボッという音が武装服の中から漏れた。
ゴーグルには口から溢れた血がつき、そのまま地面へ伏せった。

ぴくりとも動かない。


「死んだ」


フィッツジェラルドの声に、闇瓦は一斉にドストエフスキーに銃を向けた。

安吾の頬に嫌な汗が伝う。


「妙な動きがあれば即射殺します」

「ええ、行きましょうか」


ドストエフスキーは手を上げたまま立ち上がる。
そして闇瓦と共に歩く。

安吾はちらりと中野を見る。
それに対して中野は掌をやり、先に行ってと合図した。


特務課が立ち去る背中を見たまま、フィッツジェラルドは問うた。


「探偵屋、参謀。奴の異能が判るか？」

「…いや」

『さあね』


ドストエフスキーの異能を判る者は、この場の誰もいなかった。


特務課の姿が完全に消え、残るは太宰、中野、A、フィッツジェラルドとなった。
四人とも言葉を発さない。

その中で荒い吐息が聞こえてきた。

それは太宰の隣＿＿Aからだった。


がくり、とAが膝から崩れ落ちかける。
太宰は咄嗟に支えた。


「Aっ」

「恐らく、契約が終わったからだ。すぐに病院に戻さないと」


Aが中野に頼んだのは、"一時的に怪我を無かったことにする"だった。
それで普通に体を動かすことができたのだが、ドストエフスキーを特務課に渡したことによって効果が消えた。

重症の上に疲労、そして異能による副作用が重なっている。

先程よりも状態は悪化していた。


「私の車で送ってやる、早く連れてこい」


フィッツジェラルドが落ち着いた声で言い、歩き出した。
その後ろを中野が着いて行き、太宰はAを横抱きにして後を追う。


「嗚呼、だけど向かう先は探偵社にし給え」


太宰の言葉に中野が怪訝そうな顔をする。


「太宰くん、如何いうこと？」

「うちには優秀な女医がいますから」


そう安心させるように微笑んだ。


＝＝＝＝＝＝


インフルで死んでました。
今日から更新再開です。

女医の異能とは。→←思想家とは。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す