織田作にドッキリとか絶対無理じゃね？ と思った今日この頃。【黒の時代】

恋愛とシリアスを同レベルにしてしまうのはおかしいだろうか ページ31

あの後、何とか安吾さんの腕から抜け出して来ました。つか寝てんのに何であんなに力あんの？

次は織田作さんの処に、行く予定──だったのけれども。盛大に行く気が起きない。そりゃあんなことがあった後は当然なのだろうが。


顔に手を当てると、未だ少しだけ熱を持っている。

帰ろ、とぽつりと独白した。











戻って来てみれば、太宰さんが「お帰り」と笑顔で出迎えてくれた。連絡先交換できた、と訊いてきた彼を無視してソファに倒れ込む。そうすれば、何故かふっと笑い声が聞こえた。

ぽんぽん、とニ・三度頭を撫でられる。


……一瞬だけ太宰さんを格好いいとか何とか思ってしまった。一生の不覚である。本人に伝えたら「ひどい！」と泣かれたので逆にそうしてあげれば、仕事の効率が向上したのでこれからもこうしようと思った。


──さて、現在地はルパンである。今回は久方ぶりに私から行きたいと云い出した。



「おっ、織田作」

『織田作さん！ アドレス交換しましょう！』



バーに入ると、もう既に織田作さんが居た。すぐさま携帯のことを口に出す私に、織田作さんが一瞬不可解げな表情をして、「あぁ」と頷く。

早速交換。やったね。


しかし此処で、太宰さんが「あれ？」と首を傾げた。



「昼に行ったんじゃ」

「……いや？ 俺の処には来てないが」



太宰さんの言葉に、織田作さんが首を振って否定した。げ、と私の顔が引き攣る。やましいことは無いはず、……なのだが、かといって昼間のことをそのまま口に出すのは流石に躊躇われる。

じっと此方を見つめてくる二つの疑わし気な視線に、あー、とどう云い訳しようか云いあぐねていれば。



「何の話です？」



そしてそもそもの発端の人物──安吾さんが、ひょっこりと私達の後ろから顔を出した。それにビクッと過剰に反応したのは私だけで、太宰さんは何の躊躇もなく「安吾ー。今日安吾の処に凪ちゃん来た？」と訊いた。

それが何ですかと云う顔の安吾さんは、軽く顎を引く。



「だから、何の話をしてるんです？」

『な、何でも無いですよ！』

「安吾の処には行ったのに、織田作の処は行ってないの？」


太宰さんがそう云うと、其れだけで事態を察したらしい安吾さん。あぁ、なんて呟き声を漏らす。それから急に私の耳元へ唇を近づけ、





「──結構、愉しかったですよ？」





余りにも色気のあり過ぎる安吾さんに、私の顔は火が付いた様に赤くなる。

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