雨を見てまた、君を想う【太宰治】

第四十一話. ページ42

『もしもし森さん。太宰さんとの接触がありました』


Aちゃんからの突然の電話に少し驚いたが、実際何が起きたかは判っていた


太宰くんが、雨が降る度に外出していると云う情報は以前此方に来ていた


其の理由を推測するのは容易いものだった。単純に、Aちゃんの為


いつの日か起こるであろう接触した時の為に彼女の愛用している太宰くんからの贈物(プレゼント)である外套に盗聴器を仕込んでおいた


一連の会話を聞いた上で改めて、太宰くんの素行に疑問を抱く


あれ程秀でた頭脳を持ち合わせ乍、何故Aちゃんの本心へと辿り着かないのか


広い首領室にて一人、ぼうっと一点を見つめ考えていた


其の一端の思考を遮る様に紅葉くんが部屋へ入ってきた


「鴎外殿、何か大きなものが動き出したそうじゃ」


「……とうとう始まって仕舞った様だね」


私の長く積まれた計画の中に、勿論組み込まれて居たもの



“対傘下異能力抗争”



繋がりの最も濃かった傘下に置いている異能力組織に裏切りの兆しが見えていた


以前からAちゃんに調査をお願いしていた案件で


先刻Aちゃんが滅ぼした裏切って仕舞った組織の更に上層部の様なものだった


「此処迄早急に動き出すとはねぇ。面白い」


「どうするのかえ、勿論全部隊を動かすのじゃろう？」


「嗚呼。何があっても此の街だけは死守しなければならないからね」


紅葉くんと話していると、再度電話が鳴り響いた


「もしもし？」


『首領。ヨコハマ全体が騒然としてます』


「ほう、街全体が。理由は？」


『明日より無差別で人を嘆かせると、脅迫の様な予告が全体に出ました』


以前から調査していた組織で間違いありません。と、Aちゃんより告げられる


「そうか…予定に変更は無いよ。明日から全部隊に連絡をし、街に出なさい」


把握している敵対組織の異能力者は全て戦闘向きで、前線攻撃を得意としている


…云わば盤上遊戯(チェス)。つまり、裏から攻めるのが最適解だと見られるだろう


だが其れならば相手の思う壺。此の戦いは上空を取る


空中攻撃戦で敵の後衛部隊を叩く。失敗は許されない


失敗して仕舞えばヨコハマの街其のものが消滅して仕舞うから


「チェックメイトの鍵は君だよ………中也くん」


価値を確信した此の抗争に云わずもがな口角が自然と惹き上がる


初歩的な事には案外目を奪われないのかもしれない






私はある一つの事柄を忘却していた＿＿＿＿＿

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