ダイヤモンドリリーの咲く頃に [文豪ストレイドッグス] [中島敦]

二十九輪目 ページ30

Aside
「Aちゃん、月が綺麗ですね」


え？ 驚いて敦くんの方を見る


敦くんは静かに輝いている月を眺めている


私は『月が綺麗ですね』という言葉の意味を知っている


まだ、孤児院にいる頃に夏目漱石さん？だったかな？


その人が確か……『I Love you 』を日本語に訳したものだったと思う


あの時、その言葉のことを知ってとても綺麗な表現だなと思ったのをよく覚えてる


そして、『もっと大人になったら、こういう素敵なことがあるのかな』


とか、考えてたっけ。本当に懐かしい


実際、その言葉が現実になってるんだけどね


……でも、敦くんは本当に私なんかでもいいのかな？


きっと敦くんならもっといい人が見つかる。だってとても優しいんだもの


今日一緒にいて……いや、前から感じてた 一緒にいてすごく楽しかった


「美味しい」って言いながらコーヒーを飲んでくれたり、仕事のこと楽しそうに話してくれたり


鏡花ちゃんのことを話してくれたり、ヨコハマの有名なところとかを教えてくれたり


もしかしたらこの告白が一瞬の気の迷いなのかもしれない


私なんかじゃ釣り合わないかもしれない だけど……


神さま、あなたがもし居るんだったら


「私、死んでもいいわ」


彼のとなりに少しでも長く、出来ればずっと一緒にいさせてください

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