異能力に求婚されてます【文スト】

新世界より ページ46

「時間だ」


太平洋に浮かぶ一つの豪華客船。
その客船の一室に一人の男が座っていた。


「島国の田舎マフィアめ。
約束の時間も守れないとはとんだはんちく(・・・・)だな」


男はテーブルに置かれていた一枚の写真を指先で持ち上げる。写真の中では本に視線を落とした、艶やかな黒髪の少女が映っていた。


「懸賞金作戦は失敗。どうしたものだか」


テーブルに置かれていたコンピューターに声をかける。


「どうぞお好きに」

可憐な淑女が、応答する。


「わたくし達が手袋(ハンドウェア)を汚す程の相手ではありませんもの。それに、わたくし達が欲しいのは"魅了"の能力者……」


【時計塔の従騎士】近衞騎士長
デイム・アガサ・クリスティ爵

能力名【そして誰もいなくなった】



「あらゆる異能力を魅了する能力……実に罪深い。いずれにせよ、全て予想通りです。ぼくたちは勝手にやらせてもらいますよ───神と悪霊の右手が示す通りに」


死の家の鼠 頭目
フョードル・ドストエフスキー
能力名【罪と罰】



「ご機嫌よう」

「ではまた」

殆ど一方的に通信が切られ、男は苛立った様に舌を打つ。これだから協調性のない貧乏人は嫌いなのだ。


「二番手が利益に与れる道理は何もない」


持っていた写真を手放すとグラスを掲げ、笑みを深めた。



「約定の地は我ら組合(ギルド)が必ず頂く」


フランシス・スコット・キー・フィッツジェラルド

能力名【華麗なるフィッツジェラルド】



第一楽章は終わり、物語は新たな章を迎える。



　

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