38、賭博師は耳許で囁く ページ38
××
執務室を出ると今まで笑みを貼り付けていたAの表情、そして態度が一変した。Aは何だかどうにも嫌な予感を感じながら、Aの横顔を見つめる。
「ちっ……あの狸爺め!」
ひどく苛立った様子でAに視線を向ける。
毒蛇の様な刺々しさを感じる真っ赤な瞳と視線が絡み、Aはすぐに目を逸らした。そして鋭い瞳でAの全身を値踏みする。絹糸で作られたように細い茶色の髪にすっと通った鼻筋。すらりと伸びた背筋と手足が躾の良さを伺わせた。成る程、確かに"宝石"にしたらさぞや美しい事だろう。それに少し力を入れただけで折れそうな華奢な首には首輪も似合いそうだ。
「……君が、七竈Aさんかな?」
しかし、七竈Aに首輪を与えることは出来ないとAは知っている。ありとあらゆる異能力を"魅了"する異能力者。七竈Aに危害を加えられる異能力者はいない。しかし、攻撃することは不可能でも利用することは出来るはずだ。あくまで、彼女本人に自分が利用されていることを知られぬように。
「良かったら私と
「はい?」と乾いた声が廊下に響く。
Aは困惑した表情で
「そういえば確か……武装探偵社員である"太宰治"がマフィアに拘束されているとか。君の上司だろう?私と
「太宰先輩が……!?しかし……私は先ず中島先輩を助けなくてはいけなくて……」
「……上司を見捨てるのか?」
Aの瞳に動揺の色が滲む。
中島敦、というのは人虎の事だろう。
しかし人虎は芥川龍之介の担当故、彼について知ることは少ない。だから、七竈Aの上司である太宰治で釣り上げようとしたのだが、どうやら七竈Aは太宰治にそこまでの興味がないらしい。
「本当に、見捨てて良いのか?」
「……でもっ、」
もう少し、あと一押し。
「君のお仲間だろう?」
Aの瞳が完全に混乱に染まったのを見て、Aは胸の中でほくそ笑む。相手への精神的攻撃は
「大丈夫、悪いようにはしない」
少し利用させてもらうだけさ。
Aは不気味に唇を歪める。
そしてAの手錠を外してやると、"金庫室"に向かった。
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黒灰白有無%(プロフ) - 試しにと思い読んでみたら迚も面白かったです!!賭ケ/グ/ル/イは少々爆笑 Aが割と多く出て来るのは珍しいですね。凄く良い話だったので其の儘続編も楽しませて頂きます!! (9月8日 3時) (レス) id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
そよそよ - A''''わずか一話で死んだのにいいキャラだった (2023年4月14日 18時) (レス) id: 28bb2962c4 (このIDを非表示/違反報告)
モモンガ←? - すっごくこの作品大好きで何回も読んでます!!七竈ちゃん可愛くて大好きです!!!!!! (2022年8月25日 13時) (レス) id: e4f6a8b567 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン - Aはいいキャラしてるんだよなぁ (2022年1月4日 8時) (レス) @page50 id: 168fc3a64e (このIDを非表示/違反報告)
neko - 太宰さん…。 (2020年5月11日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
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