32.《はじめての感情》 ページ33
・
「おい」
『………』
「まだ怒ってんのか」
あれから、私達は港のとある倉庫の屋根の上まで逃げて来た。
本部?との通信を終えたらしい中原さんがこちらへ戻って来る。
どうやら云ってる側からその敵さんとエンカウントしてしまった様で、私が撃たれそうだったので咄嗟に引き倒したそう。
守ってくれた事は嬉しい。
嬉しいけどさ?
『普通、か弱い女の子を壁に叩きつけますか?』
「だから必死だったって云ってんだろ」
『まだ背中痛いです』
中原さん、見た目に反してかなり力が強い。
私みたいな女の子なんて簡単にへし折れちゃいそうな位。
『力加減というものをですね……』
「限界までしたっつーの」
『力強過ぎですよ…か弱い私が死んじゃったらどうするんですか』
「手前はそんな簡単に死なねェだろ」
『どういう意味ですか』
ぶすっと頬を膨らませると、中原さんは可笑しそうに笑った。
そんな彼に、また胸の奥を掴まれた様な感覚になる。
最近はそんな様な事ばかりだ。
さり気ない言動にも、この不思議な感覚になるのだ。
今まで抱いた事のない、初めての感情。
「まあ安心しろよ、簡単に死なせねェから」
『ひえ…ゆっくり苦しめて殺すんですか……』
「何でそうなるんだよ」
流石マフィア……と静かに中原さんの隣から離れてみる。
するとガシッと腕を掴まれた。
「守ってやるって云ってんだ」
『ッ、』
どくん、とまた心臓が脈打つ。
急に真剣な顔になってそう云うものだから、一瞬息が詰まった。
『………な、中原さんって、少女漫画の世界の人みたいですよね』
「……はあ…手前、本当に鈍いのな」
心臓を落ち着かせる為に、中原さんから視線を外した。
無駄に気障な台詞が似合うから正直に褒めたのに、何故か呆れられた。解せぬ。
「ちゃんと口で云わないと判らねぇか…」
首を傾げていると、中原さんは咳払いをして此方へ向き直った。
「良いか、一度しか云わねぇからな」
『?は、はい』
中原さんの緊張した雰囲気に、私もつられて背筋を伸ばす。
何だろう…何を云い出すんだろう。
ドキドキし乍ら中原さんの言葉を待つ。
「俺は────」
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奏翔 - とても面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2023年3月21日 20時) (レス) @page50 id: 49dd49021f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年3月17日 10時) (レス) id: e237c48342 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます!( ;ᵕ; ) これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2023年2月3日 7時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ゚+。:.゚おぉ(*゚O゚ *)ぉぉ゚.:。+゚めっちゃ楽しみに待っていました٩(๑>∀<๑)۶更新ありがとうございます<(_ _*)>麦子さんの小説は大好きです。頑張ってください。これからも応援してます。 (2023年1月19日 0時) (レス) @page48 id: 6b9c5dcab8 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - Senaさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…😭更新頑張ります! (2022年5月2日 1時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年4月28日 20時