検索窓
今日:8 hit、昨日:37 hit、合計:114,420 hit

19.〈予感〉 ページ20











『…………』







────あの目が頭から離れない。


見詰めれば全てを見透かされてしまいそうな、吸い込まれてしまいそうな、あの瞳。

不気味な紫色の瞳が脳裏にこびりついている。


感情が読めない表情といい、あの目といい、何だか太宰さんみたいだった。

……真逆知り合いとか?

いや、それは怖すぎる。





『はあ……』





…今日は良い事がない。

三毛猫(おじさん)には逃げられるし、森さんには捕まるし、変な人には出会っちゃうし。


……でも、何だろう。

この後、この比にならない位の何かが起こりそうな気がする。

根拠なんてない。

所詮は勘だ。

でも残念な事に、私の勘は何時も当たってしまう。





「…A?」

『っ、はい!?』





突然聞こえた名前を呼ぶ声。

反射的に顔を上げると、怪訝な顔をしている中也さんが目に入った。


ぼんやりしてたから彼が帰って来た音にも気付かなかったらしい。





『お、お帰りなさい…』

「ただいま。…如何した?怖ェ顔してたぞ」





外套と帽子を置いて、心配そうな顔をする中也さん。

そんな彼に、胸がじんわりと痛くなる。


…優しい。

この人の側にいて何時も思うけど、本当にマフィアの幹部なのかって位、優しすぎる。





『……いえ、一寸学校の事で考え事してて』





私がそう笑えば、中也さんは「そうか…」と力を抜いた。


…駄目。

中也さんに余計な心配はかけたくない。


気を入れ直して料理を再開しようと包丁を握った時。





『…へ、?』





後ろから身体を抱き締められた。

抱き……って、え?


数秒間フリーズした後、ハッとしたように顔が熱くなる。





『ちゅ、中也さ、今わたし料理ちゅ…』


「…うるせ。充電ぐらいさせろ」





耳元で掠れた低い声が響く。

それが滅茶苦茶色っぽくて、身体がピシッと固まった。





「あー………疲れた」





そんな呟く声と一緒に、抱き締める力が少しだけ強くなる。


ただでさえマフィアの仕事ってハードなイメージなのに、

徹夜だなんて流石の中也さんでも相当疲れるだろう。





『……中也さん』

「…ん?」





私は持ったばかりの包丁をまた置いて、抱き締める力が緩くなった隙にくるっと後ろを向いた。

そして逆に今度は私が中也さんに抱き着く。





『…私も、充電』





そしてそう云い乍ら肩口におでこを押し付ける。


…私だって癒しを求めたって、良いよね?






20.〈少女の願い〉→←18.〈仮面ノ暗殺者〉



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (233 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1069人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

奏翔 - とても面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2023年3月21日 20時) (レス) @page50 id: 49dd49021f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年3月17日 10時) (レス) id: e237c48342 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます!( ;ᵕ; ) これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2023年2月3日 7時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ゚+。:.゚おぉ(*゚O゚ *)ぉぉ゚.:。+゚めっちゃ楽しみに待っていました٩(๑>∀<๑)۶更新ありがとうございます<(_ _*)>麦子さんの小説は大好きです。頑張ってください。これからも応援してます。 (2023年1月19日 0時) (レス) @page48 id: 6b9c5dcab8 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - Senaさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…😭更新頑張ります! (2022年5月2日 1時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:麦子 | 作成日時:2018年4月28日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。