19.〈予感〉 ページ20
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『…………』
────あの目が頭から離れない。
見詰めれば全てを見透かされてしまいそうな、吸い込まれてしまいそうな、あの瞳。
不気味な紫色の瞳が脳裏にこびりついている。
感情が読めない表情といい、あの目といい、何だか太宰さんみたいだった。
……真逆知り合いとか?
いや、それは怖すぎる。
『はあ……』
…今日は良い事がない。
……でも、何だろう。
この後、この比にならない位の何かが起こりそうな気がする。
根拠なんてない。
所詮は勘だ。
でも残念な事に、私の勘は何時も当たってしまう。
「…A?」
『っ、はい!?』
突然聞こえた名前を呼ぶ声。
反射的に顔を上げると、怪訝な顔をしている中也さんが目に入った。
ぼんやりしてたから彼が帰って来た音にも気付かなかったらしい。
『お、お帰りなさい…』
「ただいま。…如何した?怖ェ顔してたぞ」
外套と帽子を置いて、心配そうな顔をする中也さん。
そんな彼に、胸がじんわりと痛くなる。
…優しい。
この人の側にいて何時も思うけど、本当にマフィアの幹部なのかって位、優しすぎる。
『……いえ、一寸学校の事で考え事してて』
私がそう笑えば、中也さんは「そうか…」と力を抜いた。
…駄目。
中也さんに余計な心配はかけたくない。
気を入れ直して料理を再開しようと包丁を握った時。
『…へ、?』
後ろから身体を抱き締められた。
抱き……って、え?
数秒間フリーズした後、ハッとしたように顔が熱くなる。
『ちゅ、中也さ、今わたし料理ちゅ…』
「…うるせ。充電ぐらいさせろ」
耳元で掠れた低い声が響く。
それが滅茶苦茶色っぽくて、身体がピシッと固まった。
「あー………疲れた」
そんな呟く声と一緒に、抱き締める力が少しだけ強くなる。
ただでさえマフィアの仕事ってハードなイメージなのに、
徹夜だなんて流石の中也さんでも相当疲れるだろう。
『……中也さん』
「…ん?」
私は持ったばかりの包丁をまた置いて、抱き締める力が緩くなった隙にくるっと後ろを向いた。
そして逆に今度は私が中也さんに抱き着く。
『…私も、充電』
そしてそう云い乍ら肩口におでこを押し付ける。
…私だって癒しを求めたって、良いよね?
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奏翔 - とても面白いです!更新待ってます!頑張ってください! (2023年3月21日 20時) (レス) @page50 id: 49dd49021f (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - とても面白かったです!更新楽しみにしてます! (2023年3月17日 10時) (レス) id: e237c48342 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - 瑠李さん» ありがとうございます!( ;ᵕ; ) これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2023年2月3日 7時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
瑠李(プロフ) - ゚+。:.゚おぉ(*゚O゚ *)ぉぉ゚.:。+゚めっちゃ楽しみに待っていました٩(๑>∀<๑)۶更新ありがとうございます<(_ _*)>麦子さんの小説は大好きです。頑張ってください。これからも応援してます。 (2023年1月19日 0時) (レス) @page48 id: 6b9c5dcab8 (このIDを非表示/違反報告)
麦子(プロフ) - Senaさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです…😭更新頑張ります! (2022年5月2日 1時) (レス) id: 064241d233 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麦子 | 作成日時:2018年4月28日 20時