検索窓
今日:11 hit、昨日:5 hit、合計:85,980 hit

34 ページ34











「いつの間に考えたんだい?足に武器を仕込むなんて」


無事祓除を終えた帰り道、夏油は永広にそう尋ねた。


「武蔵さんに教わった。思わぬ所に隠してある武器こそ、真の戦いで真の力を発揮するって」

「武蔵さんと言うのは、村の人?」

「うん」


永広のやけに慣れた戦い方に、夏油はなるほどと呟く。やはり、特級呪術師の蓮川櫻子“だけ”の賜物ではなかった少女のようだ。村にいた様々な術師の結晶。あらゆるものからあらゆるものへと知識をふくらませていた。


「この調子なら、1級呪術師までそう遠くなさそうだね」

「分からない。今回は呪具があったけれど、次は無いかもしれないから」

「じゃあ術式も完成させるのか」


そのつもりだと頷いた永広に、夏油は笑顔を返す。


「何故、術師になる事を決意したのかい?」

「婆さまに言われたから…と言って誤魔化していたのが、つい最近」

「今はどうなんだ?」


永広は質問に即答した。潔く、いっそ恥ずかしいほどに真っ直ぐ。


「ヒーローになりたい。貴方のような人に」

「……私?」

「人を安心させられるのがヒーローだと、幼い頃見ていたテレビの登場人物が言っていた。だから私は、私という人間が色んな人の安心を生めるようになりたい。色んな人の安心になりたい」


いやはや、幼い子供の戯言のような夢物語。ヒーローなんているものか、自分達は呪いを司ると言うのに。

しかし、夏油は否定をしなかった。


「いいんじゃないかな。素敵な目標だと思うよ」

「ありがとう。正直、からかわれると思っていたから嬉しい」


永広がほんの少しだけ微笑んだ。さながら蕾が花を開きそうになるほど柔らかな笑顔に、沈黙が走る。

足を止め、夏油は呆然とする。永広が首を傾げた頃に、沈黙を破った。


「っはは!」

「どうかした?」

「フフ…いや、モヤモヤしていた事に納得がついて、思わず」

「……よく分からないけれど、楽しそうでなにより」


日が傾いて、橙色に道を照らしている。何とも阿呆らしい五条の顔が浮かんでしまった夏油は、しばらく笑いを止める事が出来なかった。

35【現在ver.】→←33



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (101 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
339人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 五条悟 , 夢小説
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作成日時:2021年3月9日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。