1月・続々 ページ44
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「A……!」
北は声を張り上げて名前を呼ぶ。
風の音に負けじと何度も声を張った。
「ッは……ッ……」
1月の寒さは体にこたえる。
北の体力は着々と削られていった。
「A……待っとるからな、俺は居るからな。」
きゅ、と気を引き締めた北は
ドカッと神降ろしの祠の横に座り込む。
防寒対策をしているとはいえ、
雪の中じっと座っているのは酷く辛い。
それでも北は寒さをこらえて座っていた。
「Aは来る……絶対に、今日や。今日来る。」
北の瞳は確信している様に輝いていた。
その光は揺るぎない。
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それから何分経ったのだろう。
もしかしたら"何時間"かもしれない。
流石の北でも寒さで体が強張り
体の末端の感覚は既に乏しかった。
こんな無茶なことは普段絶対にしないだろう。
それでも北はじっと待った。
「ッ…………A…………」
寒さに震える唇でそっと名前を呼ぶ。
吐き出される息が冷たい空気に溶けていく。
北の瞼はゆっくり閉じていく。
「(俺は……とんだ阿呆やな…………
もっと、何か、方法あったやろ………………)」
自分の行動に呆れながらも、北はもう動けない。
足は凍ったように動かなかった。
「(でも、"ちゃんと"伝えな…………)」
ゆっくりと北の体が前のめりになる。
その瞬間、何かが北に飛びついた。
衝撃で北は閉じかけていた瞼を無理やり開ける。
それからゆっくり視線を背後に向けて
その"何か"を視認すると北はそっと微笑んだ。
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「待っとったよ、A………………」
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時