1月・続 ページ43
北信介side
「信ちゃん気を付けてな。」
「うん。行ってきます。」
防寒着に身を包み長靴を履く。
こんな大雪の日に外に出るのは危険なんは承知やけど
ばあちゃんの分も初詣に行かなあかんし。
流石に車は出せないので
ゆっくり歩きながらお社を目指す。
雪が積もった石段に足をかける。
……?一番下の段の端だけ雪が無い。
人でも座ったんかな。
滑らんように気を付けながら石段を登り、
すぐに見えたお社に目を見開いた。
「扉が……神棚の扉も開いとる……?」
よくよく目を凝らせば宮司さんが言っとった
祀ってある鏡も見当たらない。
「な……何で……?
あ……Aは、ツチノカミ様はッ……?」
祀られているツチノカミ様……
……Aはどうなってしもたん?
「あっ……宮司さん、」
「信介君、おはようございます。」
お社の裏手から回ってきたのだろう。
どこか清々しい顔をした宮司さんが微笑む。
「あの……神棚って──────……」
「ツチノカミ様ですか。」
宮司さんは「ですよね」と言いたげな顔をして
持っていた雪掻きのスコップを両手で握る。
「ツチノカミ様は……」
「……」
宮司さんが優しく微笑む。
「
「!」
「今頃は街の外に行かれたかもしれませんね。」
「自由、に……」
良いことなんだろう。
Aが、ツチノカミ様が望んだことなら。
でも……
「あ……ど、どうやって自由になったんです?」
「鏡を割りました。ほら、あそこに……」
宮司さんの示す先にはお供え物を載せる
上に載っていた鏡の破片が朝陽を反射して光る。
「なるほど……う"っ……」
「ッ……急に風が吹いてきましたね……
信介君も、危ないから早めに帰りなさい。」
「はいッ……」
ゴウゴウと吹き付ける風と雪。
……この悪天候は、
ツチノカミ様がおらんくなったから、とか。
地面の温度が無くなった様に感じたのは
加護が無くなったんと同じやったんか?
風に押し負けまいと足を進める。
長い石段を慎重に降りる途中、
ふと雪の隙間から見えた田圃の様子にハッとした。
「約束したんや、待ってるて言うた……!!」
その瞬間、吹き付ける雪に何も感じなくなった。
ただただ田圃だけを見て前に進んだ。
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時