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3月 ページ5

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『なんやえらいデカいなあ。』


「トラクタや。これで田起こしすんねん。」


『ほぁ……ちょっと怖いなあ。』





Aは物珍しそうに

トラクタの周りをクルクル歩いて見る。





『でも美味しい米のためやもんな!
これも大事なことや!』


「せやで。田起こしせんと美味しい米は出来ん。」





Aはぎゅ、と両拳を握ってトラクタから離れる。





『今日は気持ちいい天気やからぁ……
田起こししてる間はお昼寝しとくわ……』





柔らかい草の上に寝転がったAは

大の字になって目を閉じる。





北がトラクタに乗って広い田圃に入って行った時

Aはゆっくり目を開けて姿を消した。





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『ここの田圃はしばらく使われてなかったから
ちょっと土が固いなあ。』





『土地神』は姿を消した状態で

田圃の中を歩き回る。





『信ちゃんがええ米を作れるように
私もちゃんと見守ったるからなあ。』





田圃に両手をかざした『土地神』は

目を閉じてそっと舞を舞う。





それに合わせるかのように

土中のミミズや微生物が動き出す。





『ふふふ、柔い土のがええもんなあ。
山の水も美味しいねん。たんと飲んどかんとな。』






『土地神』の体は土で、水で、空気である。

綺麗な自然が綺麗な神を創り出す。






「フゥ……こんなもんか。」






トラクタを止めた北は

Aが寝転がった草原に向かう。






『あ、あかん。もう終わってしもた!はよ戻らな!』






『土地神』は慌てて元の場所に戻り姿を現す。






「A、終わったで。」


『ほんま……?早いなあ……』


「はは、そうか?
ん……?足に土付いてるで。」


『!あっ……ほんまや……
あはは、寝ぼけて歩き回ってしもたんかな?』


「拭いたるわ。」






北はしゃがみ、Aの足をタオルで拭く。

Aは嬉しそうにそれを見ていた。







『……ええ事すると自分に返ってくるんやで。
悪い事も然り、ちゃんと神様は見てんねん。』



「……ばあちゃんも似たようなこと言ってたわ。
見とるんやって。」



『ふふふ、信ちゃんええ事してくれたから
きっとええ事が返ってくるで!』



「そら嬉しいなあ。」




.









.


Aは微笑んで北の頭を撫でる。

北にはその手は優しくて、大きく感じた。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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