11月 ページ34
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冷えた風が吹くようになり、
山は赤や黄色で彩られ始めた。
この季節、米農家は田圃の状態を調べて周る。
それは北も同様だった。
「……ここは問題なさそうやな。」
今日の北の隣にAは居ない。
AはAで土地神としての仕事をしていた。
土を冬に備えて休ませるために
微生物や山の動物たちを誘導するのだ。
地下水が凍らないように流れを調節したり、
A自身にも養分を蓄えたりしなくてはならない。
「こっちは少し肥料まかんとな……」
北は肥料の詰まった袋を抱えて田圃を歩く。
「……西側の土は固くなりやすいんやったな。」
長靴で踏んでみれば確かに固い土。
田植えをする前、Aが言っていた所だ。
「でも……念入りに手入れしたお陰か、
西側は粒も大きくてええ米が採れたんよなぁ…」
ふふ、と笑みをこぼしながら北は歩く。
不意にポケットに入れた携帯が鳴った。
「ん……?」
表示には「宮治」の文字。
「もしもし、」
《あ、北さん!治ですけど、今大丈夫ですか?》
「大丈夫や。どないしたん?」
《今日ツムが帰って来よったんですけど、
もし良ければ一緒に昼飯食いません?》
「俺はかまへんけど……治の店はええん?」
《うちの店を貸し切りにするんで大丈夫です!》
「分かった。なら─────」
時間を確認して北は電話を切る。
「治の店までは車で数分やったよな。」
軽く片付けをした北は
一度家に帰るべく車に乗り込んだ。
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「ばあちゃん、昼飯は治達と食べてくるわ。」
「あらあら……仲良しさんやねえ。
ええよ。楽しんで来てな。」
「うん。ありがとう。」
着替えを済ませた北は車に乗るため外に出る。
『あ、信ちゃん。』
「Aか。"仕事"終わったん?」
『うん!ちょっと休憩や。
休まなあかんのに疲れとったら意味ないからな。
……信ちゃんどっか行くん?』
「高校の後輩と会うねん。」
『なるほど!
ほな採ってきた木の実は後で食べてや!
これ、信ちゃんとばあちゃんにお土産やねん。』
Aはそう言って風呂敷を渡す。
「おおきに。
…………せや、Aも来るか?」
『え?』
「俺の後輩と会ってみいひん?」
『え、あ、会ってみたいけど……ええの?』
「ええよ。ほな治に連絡するな。」
サッと連絡した北。
Aは北に続いて車に乗り込んだ。
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時