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10月・続続続々 ページ33

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乾いた風がAと北の髪を揺らす。

風の音だけがしていた。






「……!すみません(・・・・・)ッ、俺……」






ハッとした様に慌てて謝る北。

Aは首を横に振ってそれを制す。






『ええねん、謝らんといてや。……嬉しいから。』






優しく微笑むAは

とても美しくて、北も思わず息を呑んだ。






『……うちもな、信ちゃんが好き。』


「!」


『でも、今のままやと一緒になれへん。』






ごめんな、と悲しそうに呟くA。

今度は北が首を横に振る番だった。






「Aは、悪くない。
俺はAと一緒に居れるだけでええねん。」


『……』


「せやから……
居らんと、ならんといて……」





消え入るような声で再び涙を流す北。





『信ちゃんは優しいなあ……
ほんま、優しいわ……』





困ったように笑うA。

それからそっと手を伸ばして北の手を握る。





『……信ちゃん、うちはちゃんと居るよ。
ちゃんと見守ったるて言うたから。

でも、でもな…………
うちも、信ちゃん好きやから……ッ、』





下唇を噛んで俯くA。





『うちは……苦しいわ……ッ……』





パ、と上がったAの顔は

涙で濡れて苦しそうに歪んでいた。





「A…………」





北は初めて見せたAの涙を優しく拭う。





Aはふ、と目を閉じて

決心したように口を開いた。





『信ちゃん、もうすぐで1年やねん。
うちと、信ちゃんが会うてから1年。

……もしも、年が明けて
それでも信ちゃんがうちのこと好きで居てくれたら
田んぼで、待ってて欲しい。』



「!」



『これも、"約束"しようや。
待っててくれたら、必ず、必ず会いに行く。』





小指を差し出すAに

北は目を瞬かせてからふっと微笑み頷いた。






「分かった。きっと俺の気持ちは変わらんよ。
やから、"約束"やな。待っとるわ。」








.








きゅ、と小指どうしが結びつき

またひとつ、人と神とを繋ぐ約束が生まれた。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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