検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:11,093 hit

2月 ページ4

.





『信ちゃーん!』


「Aか。おはようさん。」





ふわふわの襟巻きを巻いたAは

ブンブンと元気よく手を振った。





『おはよう!今日は何するん?』


「今日は肥料を撒くで。
こないだ土の成分を調べたからな。」





ほら、と軽トラックに乗せた肥料を指し示す。

Aはキラキラした目でそれを見る。





「汚れてまうから、ちょお離れとき。」


『え〜……』


「終わったら遊ぼうや。」


『しゃあないなあ……約束やでー?』


「もちろんや。」





大人しく田圃から離れるA。

あの祠の横でじっと北を眺めていた。





『信ちゃーん!西側に肥料が足りへんよー!
そこの土、固くなりやすいねん!気を付けてや〜』


「はいよー」





ここらの土地は自分の体であるA。

誰よりも詳しかった。





『あっ!信ちゃんそこ掘り返さんといて!
蛇さんが冬眠してる!!』


「ほんまか、それは危ないわ。どないしょ。」


『春になれば山に戻るやろから
今はそっとしたってや。』


「そうなん?ほなそうするわ。」





ある程度の肥料を撒き終えた北は

タオルで汗を拭いながら戻ってくる。





『お疲れさん!』


「Aも色々教えてくれてありがとうな。」


『ええよ!
……なぁ信ちゃん、この祠のこと知っとる?』





Aは祠の屋根をそっと撫でる。





『信ちゃんが産まれるずっと前からあるねん。
みんなな、色んなもんお供えしてくんやで。
お水にお酒、果物もあったなあ。』


「土地神様の祠やろ?
俺もまたお供えしなあかんなあ。」


『せや信ちゃん!
あの白くて丸いやつ、なんて言うんやっけ。
もちっとしてて甘いねん。そんでめっちゃうまい!』





まる、と手で輪を作るA。

北は少し考えると大福か、と首を傾げた。





『それや!ダイフクや!!アレうまいねん!』


「餡子もええけど、いちご大福もうまいで。」


『イチゴ!?それは食べたことないわ……!』


「ほな今度持ってくるわ。一緒に食べよか。」


『ほんまに!?やったあ!!楽しみにしてるわ!』





飛び跳ねて喜ぶAに北も思わず声を出して笑う。









.









Aの嬉しそうな声に合わせて

ほんの少し暖かい春の風が吹いていた。

3月→←1月



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (21 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
16人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。