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9月・続続続々 ページ26

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『信ちゃん、うちのこと、許してくれる?』



「当たり前や。Aは何も悪くないんやから。

Aは……その、許してくれるか?
町の人達も悪気あった訳やないんや……」





北はゆっくりAを離して尋ねる。

Aは満面の笑みで頷いた。






『もちろんや!

皆は信ちゃんの事を思って言ったんやろ?
ちょっと悲しかったけど、悪い事やないし。

今度からはうちも考えるわ。
もうちょっと姿を見せながら話す様にする。


あ、着物やとジダイオクレなん?
どないしよ……着物以外は持ってへんわ……』






アワアワと慌て出すAに

北もホッとしたように笑う。





「ありがとうな、A。
洋服はうちのばあちゃんに頼んだろか?
ばあちゃん裁縫は得意やねん。」


『え!ええの!?
ヨウフクならジダイオクレとちゃう?』


「おん。今度 採寸しに行こか。」


『やったぁ!!』





ぴょんぴょんと跳ねるAに北も微笑む。

それからピタリと止まって真剣な目で北を見る。





『なぁ、信ちゃん。
…………うちは『土地神』やねん。』



「……知っとるよ。」



『人間やないねん。』







悲しそうに囁くAに

北は真っ直ぐAの目を見る。







「でもAはAや。」



『!』



「今、俺が話してるのは
『土地神』やけど、それ以前にAや。」



『……信ちゃんを選んで良かったわ。』







Aは嬉しそうに笑う。







『うちが『土地神』なんは秘密にしてな?
ほんまは人にバレたらあかんのやけど…………
信ちゃんは特別や。

何かよう分からんけど…………
信ちゃんは初めて会うた気がせぇへんねん。

何か縁があったのかもしれんな。
ふふ、前世でも友達やったのかもなあ。』



「分かった、秘密にする。
……せやなあ、友達やったかもなあ。」








夢の中でタイムスリップした話は秘密。

きっとこのタイムスリップは必然だったのだ。







Aが両手を広げると同時に

ザァ……と風が稲穂を揺らす。






『ああ……ええ感じに実ったなあ。
他の田んぼよりずっと立派な稲やで。』



「そら嬉しいな。」



『ふっふっふ!前に言ったやろ?
信ちゃんの育ててる稲やもん。当然や!

こら明日は稲刈りやなあ!!
信ちゃん!うちも手伝うで!!!』



「おう、一緒に頑張ろな。」







北は微笑んでAの頭を撫でる。

笑うAは普通の女の子だった。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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