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8月・続続続々 ページ19

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「生贄として捧げられた女の子は
Aという名前でした。

ここに描かれているだけですから
本当にそうだったかは分かりません。

でも信介君が言うてはるように
おかっぱで、10に満たない女の子なんです。


A様はこのお社付近で亡くなられました。
同時にツチノカミ様の誕生した場所です。

ですから……御神体が無くなるなんて……
どこかへ、行ってしまったとしか……」





宮司は困った様に空っぽになった神棚を眺める。





「土地神様が居なくなるなんて、あるんですか。」


「滅多に無いとは思います……
でも機嫌を損ねてしまった、としたら……」





いよいよ悲しそうに呟く宮司。

北も眉を下げてその様子を見る。





「機嫌を……あの、皆さんが僕の
お祓いを頼みに来たのはいつ頃ですか。」


「……それも先月の中頃ですわ。
信介君の邪魔してるんやったらやめて下さい、と
お話しておいてくれと言われまして……」


「邪魔……そんな、……あ。
ほんなら、Aは邪魔や言われてどこかに……!」





北はバッと神棚を見る。

それと同時に大きな雷の音が響いた。





「!どこかに落ちましたね、」


「誤解を解いたらな……
やって、Aは邪魔やない。約束もしたんや。」


「信介君!?今外に出るのは危ないで!」





台風が近付いて来たのか外はすでに土砂降りだった。

それでも北は走り出した。





夕陽も厚い雲に隠れ薄暗い。

外で作業をしていた人達ももう居ない。





雷も鳴っている。

危ないのは北もよく分かっていた。





「Aーっ!!勝手なこと言ってごめんな!!
Aは邪魔やないから!戻って来てくれ!!」






自分の田圃に向かって叫ぶ北。

雨音に掻き消されながらも必死に叫んだ。





叫ぶなんてらしくない。

でも叫ばずにはいられなかった。





大事な友人だから。

祖母と同じくらい近くで応援してくれた人だから。






「約束したやろ!!
俺が作った米、食べてくれるんやろ!!」






ゴウゴウと水が流れる音がして

川の水が増えていることが分かった。






「ッ……Aー!!」





ビュウ、と強い風が吹いて体が傾く。

濡れた草に尻もちを着いた北は横の祠に気付く。






「"神降ろし"の祠……すみません、開けます。」






一言謝ると北は祠の扉を開いた。

中には小さな鏡。






北はそれを握って高台まで走った。

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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます!!そう言って頂けて本当に嬉しいです!!読んで頂きありがとうございました!!! (2021年7月4日 0時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます!来て貰えて本当に嬉しいです…!!切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……!!!読んで頂きありがとうございました!! (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……!凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……!! (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沙羅 | 作成日時:2020年10月25日 19時

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