８月 ページ15
北信介side
Aが田圃に来なくなって１ヶ月が経った。
前にもこんな事があった。
「４月は終わりと始まり」やって言うてたけど
８月はどうなんやろか。
家庭の事情とかで忙しいだけならええ。
何か体調でも崩してたら…………
«今夜、台風１６号が本州に接近し────»
足元に置いてあったラジオから
天気予報が流れる。
もうそんな季節か。
育った稲が倒れないとええんやけど。
せめてもの抗いでまた土嚢でも作ろか？
川が氾濫したら笑えへんもんな。
あん時は中田さんが無事で良かったわ。
そう言えば…………
朦朧とする意識の中で何かに叩かれた言うてたな。
みんな石とかにぶつかったんやろって笑ったけど
中田さん大きな怪我はしてへんかったしなあ。
不思議なこともあるもんや。
「台風も気がかりやし、
Aが姿を見せんのも気がかりや。
ツチノカミ様、無事ならええです。
Aのことも見たって下さい。お願いします。」
祠に手を合わせる。
この祠はいつも何か居る気がする。
でも、最近は何も感じひん。
まるで空っぽや。
「……約束、したねん。
旨い米をぎょうさん食べさせたるって。
Aもええとこ教えてくれる言うたんや。
絶対に旨い米作ったるから、ちゃんと戻って来てや。
そんでまた、色んなこと話そうや。」
Aが居ないだけで
こんなに田圃は静かやったんやな。
「信介君、」
「！」
田圃の上にある道路から
近所の人達に呼ばれて振り返る。
皆して深刻そうな顔しとる。
何か、あったんか？
「信介君にな、お願いがあるねん。」
「何です？」
「……」
歯切れの悪さに首を傾げつつ次の言葉を待つ。
「今夜からな、家から出んといて欲しいねん。
出来れば神棚のある部屋に居ってくれ。」
「え……？」
「田圃なら俺が見といたるから、な？頼むわ。」
「いや……でも、」
「信介君の身を守るためなんや。」
「俺の……？」
頼む、頼むと肩を掴まれる。
あまりの剣幕に頷くしかなかった。
「わ、分かりました。
でも何でなんか教えて貰えませんか。」
「……」
そっと目を逸らす皆さんに
俺も負けじと話して欲しいと伝える。
「信介君が…その、取り憑かれてるみたいやから。」
「取り憑かれてる……！？」
思わず声を荒らげてしまった。
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沙羅(プロフ) - トロピカーナブランケットツッパーナムルさん» めコメントありがとうございます！！そう言って頂けて本当に嬉しいです！！読んで頂きありがとうございました！！！ (2021年7月4日 0時) (
レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
トロピカーナブランケットツッパーナムル - いやこの作新ガチ好き (2021年7月3日 17時) (レス) id: 99e5f8b903 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - でこりんまんさん» コメントありがとうございます！来て貰えて本当に嬉しいです…！！切ない、でも幸せなお話が書きたかったのでそう言って貰えて私も感涙です……！！！読んで頂きありがとうございました！！ (2020年10月26日 12時) (レス) id: 1f154ecd75 (このIDを非表示/違反報告)
でこりんまん(プロフ) - 幼なじみは個性的から飛んできました……！凄く素敵なお話でうるうるしながらよませていただきました……！！ (2020年10月26日 8時) (レス) id: 5f3c679f42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙羅
| 作成日時：2020年10月25日 19時
