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0日目33 ページ34

「……ん、」
 沈んでいた意識を覚醒させて、小さく呻き声を漏らす。頭が妙にズキズキとして、どうにも思考が回らない。一歩で背中に感じるのは柔らかな布の感触で、自身の体は今ベッドの上で仰向け担っているのだと認識する。瞼の向こうから降り注ぐ白い光に眩みながらも目を開けば、そこには心配そうに覗き込むチームメイトたちの顔があった。
「おき、山形さん、おきた……!!よかったぁ〜〜」
 そう言って嗚咽混じりに喜んだのはベッドから一番近い位置で山形を見下ろしていた五色で、感情豊かな後輩は涙でグシャグシャの顔を必死に自身の袖で拭いながらよかったです、よかったですと何度も繰り返す。
「本当にね!隼人くん死んじゃったかと思ってめっちゃヒヤヒヤしたんだからネ!もうほんとヨカッタ〜!!」
 一方大きく安堵の息を吐いてしゃがみ込み、そのまま山形の足元あたりのスペースでベッドに首と両手を埋める天童、山形の位置からはワックスで掻き上げられたその赤髪がよく見えた。
 ベッドの周りに集まる皆が皆、安心しきった表情とともにそのような反応を見せるため、山形は心配をかけた申し訳無さとは別に、場違いながらもここまで自分のことを気にかけてくれる仲間がいることへの嬉しさも覚えてしまった。
「あー、俺紙飛行機飛ばした後倒れちまったんだっけ?心配かけて悪かったな、みんな」
「いえ、むしろそれを提案したのは俺なので……、俺が山形さんを危険な目に合わせてしまいました、本当にすいません」
 状況の確認の意味もこめて聞けば、返ってきたのは予想だにもしない後輩の発言で、山形は一瞬目を見開く。
「いや、お前別に何も悪くないだろ?俺もお前の案が正しいと思ったから乗ったんだし」
「でも、俺が、俺が何も言わなかったら山形さんだって無事だったはずで……すいませんでした……」
 その考えを今回危険が迫った山形自身が否定しても、川西はやはり謝罪を続ける。俯いたその顔からは赤く腫れた両目が見て取れる、この建物内に花粉が飛んでるとも思えず、きっと彼は山形が意識を失っていた間ずっと自責の念にかられていたのだろうことが推測できた。普段謝意の感じられない軽い謝罪しか耳にしたことのない山形は、川西のそんな様子に参ったように頭をガシガシとかいた。そして何を思ったのか静止するまもなくそのまますっくとベッドから立ち上がり川西の真正面に立つと、いつまでもうじうじしている後輩に軽くチョップをお見舞いした。

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星を廻せ - 中の人です。表紙作りました。人選は完全に我の趣味です。本編などには何も関係ない趣味の人選です。 (2023年3月24日 4時) (レス) id: 853819a2bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星を廻せ | 作成日時:2023年3月19日 7時

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