好きと気付いたバレー馬鹿【木兎光太郎】 (ページ18)

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18、合宿③ ページ18

「バッシュ忘れるとか、どんな神経してるんだよ……」

「A先輩らしくて良いと思います！」

「良くない事は褒めないのー」

広川が溜め息を吐きながら、一番後ろの席で呑気に寝ているAを見る。
つられて日和と巻屋も後ろを見た。

「砂、A起こしてくれる？」

「えー何で私が」

「……じゃあいいわ。蘭、代わりにいいかしら」

「おっけーです」

「いや、大丈夫！私が起こすから！蘭は何もしないで！」

岬が砂上に頼むも、この通り。
砂上に止められるも、主将の命令は絶対。伊織は既に行動していた。

「……おはよ～ございます、」

目を擦りながら、Aはむくりと起き上がった。寝足りないのか、あくびを一つする。

「おはよーAちゃん。そろそろ着くよ」

「りょーかいでーす」

「A先輩！合宿の旅館、すっごい綺麗なんですよね？！」

「綺麗だよ。特にお風呂が綺麗かな」

「露天風呂とかですか？」

「そそ！すっごい広くて気持ちーよ」

梟谷女子バレーボール部の毎夏恒例行事、3泊4日の夏合宿。
ここ数十年夏合宿の場所は変わっていない。旅館も、合宿専用の体育館もだ。

「監督とコーチとは現地で待ち合わせだから、着いたら直ぐ降りて挨拶行くわよ」

監督の大西とコーチの下山は、高校時代の同級生だ。因みに二人は女子校出身なので、なんとも言動が大雑把だ。
二人とも40代になったが、まだまだノリは若い。
そして今回の旅館と体育館は、二人の同級生が経営している。
女将となった林が、縁があると二人の教え子達に提供しているのだ。

「凄いコート数だよね。何度見ても驚く」

「たしか12コートだっけ？」

「3階建ての体育館って聞いた事ないっす」

体育館と言っても、ただの体育館ではない。
林の祖母が日本代表のバレー選手だった為、様々な工夫が凝らしてある。

「楽しみですね！早くバレーしたいです！」

日和が呑気な事を言うが、そんな楽なものではない。
きっとそれが分かるのは、明日の練習からだ。