malus＿1 (ページ5)

今日:13 hit、昨日:6 hit、合計:23,516 hit

ページページ5

.

『ムカつくのよ、その顔！出会った頃からなんか諦めた顔して
その大事な人のことも好きなくせに諦めてるんでしょ！』

まふの真っ白な顔がバラ色に色づいた
何故かとても変な気持ちになった

でもなんでまふがそんな顔をしているのか分からない

まるで恋をした女の子みたいだ。

私はびっくりして、まふのほっぺを離した
そのまま正座をする

まふは本当に恥ずかしかったのか、顔を両手でおってうずくまってしまった

本当に意味がわからない……
怒らせは出来ども、恥ずかしがらせるようなことは言ってない

それとも、大事な人ってのが“好きな人”だというのが図星だったのか

『仕方がない。私が出たら、外から扉を開けてあげる。そしたらあなたはここから出て、その大事な人を探しなさい』

ズキリと胸が傷んだ

…知っている。これは嫉妬だって。

でも、私はまふのことを本当に好きなんじゃない。
ただまふがあまりに美しいから、そう。いうなら顔がタイプなだけ。それだけ。

｢キミは……本当に強情だ。人の気も知らないで、べらべらべらべら。
いつもいつもそうだ。なんでそんなに自分勝手なんだ。意味わかんない。｣

『うさぎのように丸まったまんま言われても、怖くなんかないわ』

｢次はっ！｣

ばっと勢いよくまふが顔を上げた
あまりのことに私は少しのけぞって、まふの必死な顔を見返す

なんだこんな顔もできるんだ…

｢次こそはここを開けてよっ！
絶対にここに入っちゃダメだから！約束だから！｣

『もうごめんよ、こんななんにもないところに入るのは』

｢Aはすぐに約束を破る｣

初めて呼んでくれた私の名前は…少しむず痒かった

まふが手を差し伸べていたので、私はそれに従うように手を重ねる

そのままグッと体が引っ張られて、一瞬でまふの腕の中だ

陽だまりのような暖かい匂いがした。

｢目をつぶって｣

『何をするの……？』

近くで見るまふの顔は、一層綺麗でずるい
ドキドキと胸がはやってしまう

そもそも私は異性とこんな距離になったことないんだ
だからだ。だからこんなにドキドキして……

｢Aのファーストキスを貰うんだよ｣

恋人なんかいたことない平民の私が、もちろんキスなんかしたことなくて

初めてのキスは、想像通り甘くて優しくて
心も体も溶けてしまいそうだ

もっと味わいたい。もっと深くに…。

───私はこのキスを知っている。