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「っは…」
この空間で聞こえてくるのは二人のバラバラな呼吸だけ。吸血衝動が収まり私は我に帰れば志麻の口の端に少しだけ滲んだ血痕。私は志麻の両肩を強く押して無理やり距離を取った。
私、今何を…。
「な、なんで…なんで私に血を吸わせたの！？私は血を吸いたくなかった！これじゃあ私はっ、他の飢えた吸血鬼と同じでただの…化け物」
あまり認めたくなかった事実に最後の言葉が消えかかる。
なるべく人間に触れたくなかった。かと言って飢餓した状態の吸血鬼と同じにはなりたくなかった。
「…俺は、お前のことを誰にも言うつもりは無い」
悔しくて頬を伝って零れ落ちていく涙。それを親指で優しく雫を払う手。そして壊れ物を扱うかのようにそっと志麻は抱きしめた。ふわりと金木犀の香りが少しだけ鼻を掠める。
「例えAが人間だろうが吸血鬼だろうが関係ない。興味があるのはもちろんやけど本当はそんなの俺の建前」
志麻はゆっくりと体から離れて珍しく真面目な表情で私をじっと見つめ口を開く。
「俺がAのことを好きやから」
この瞬間、私達は世界を敵に回してしまった。
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書いた人＿夜紅茶
歌い手様＿志麻さん
✫今回こちらのお話を書かせていただきました
✫また普段からこんな感じの非現実的な物語を書かせていただいております。お時間がありましたらこちらの方もご覧下さい。
Demons Lock＜完結済み＞
死の運命が近い高校生と悪魔の志麻さんの恋愛模様。
泡沫の夢と今日も眠る＜更新停止中＞
感情豊かな少女がとあるきっかけにより天狐のセンラさんと出会うお話。
トリッキー・ドリームナイト＜連載中＞
収穫祭の夜、少女は四人の怪物の招待客となる。
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