malus＿1 (ページ3)

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お腹がすいた……

貧乏な家計だもの、お腹が満たされることは無かったけどここまでの空腹もなかった

1日3食、質素なお米と味噌汁くらいはあった

でもここには何もない。
ここに来てから何一つ、飲み物も食べ物も口にしていない

『あなたはお腹空かないの？』

｢空かないよ。これでも神様だから
人とは違う生命線だ｣

じゃ、食に困ってるのは私だけか

あんなにお供えしていたのにひとつも手をつけられてないのは食べないからなのか

それともここの扉を開けられないから、そもそも回収できないのか

『あなたは名前とかあるの？それとも神様？
私はAよ。村の外れの田んぼに住んでたの』

｢あるよ……名前。大事な人が付けてくれた名前。
まふまふっていうんだ｣

『変な名前ね。でもそのふわふわしたあなたにはとても似合ってる』

私がそう褒めると花が綻んだようにまふまふは笑った
大事な人というのは、本当に大事な人なんだろう

神様の大事な人ってなんなんだろう
女神様とか天女様とか？

何となく女の人な気がしてそんなことを思った

『あー暇。とっても暇。
ここにはなんにもないわけ？』

ゴロンっと床に寝っ転がる
木の板の床は硬くって、お世辞にも心地よいとは言えない

寝っ転がったまま下からまふの顔を見上げる

どっから見ても憎ったらしいまでに顔が整っている
汚れもどこにもついていない

ここにはお風呂なんかなさそうだけど、そこも神様パワーなんだろう

まふは私の視線に気づいたのか、困ったように眉を下げて私を見下ろした

『……ないならまふのその大事な人の話を聞きたい』

｢キミは神様に向かって１ミリも臆さないね｣

『もう3日も持たずに死ぬのよ？神様の機嫌を取っても仕方ない
それとも無能の神様は人の寿命を操れるの？』

何も答えてはくれなかったけど、駄々っ子を見るようにまふは呆れ顔で笑った

人間の思い上がりで生贄にされた私を哀れに思っているのかもしれない

確かに私という存在は、他者から見たら哀れモノなのだろう

｢いいよ……。ここに迷い込んだ僕の大事な人の話をしてあげる｣

『神様からの昔話を聞けるなんて、私は人間1奇妙な体験ができるのね』

｢そこは貴重なって言うんだよ｣

『馬鹿ね。人間からしたら、神様も妖怪も幽霊も全部同じよ』